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1984年、マイケル・デル(以下、M. デル)は、「ディーラー網を通さずにパソコン(以下、PC)を販売する方法があるのではないか」、つまり、ディーラー網を利用するかわりに、受注生産によって直接販売するというアイディアを考え出して事業を興した。
デル・コンピュータ(以下、デル)は、またたく間に再販業者に支払うマージン、大量の完成製品を在庫に抱えるコストとリスクを排除することに成功した。このようなデルの方式は「直販ビジネス・モデル」として知られるようになり、大幅なコスト優位性を手に入れた。
直販ビジネス・モデルには、M. デルが会社を興したときには想像もつかなかった利点があった。彼はこれについて次のように語る。
「顧客との間に良好な関係を築くことができた。その結果、貴重な情報が生み出され、さらに、顧客のみならずサプライヤーとの関係を強化する一助となった。この情報に技術を組み合わせれば、グローバル企業の既存のビジネス・モデルに変革を起こすような基盤を構築できる」
M. デルは、『ハーバード・ビジネス・レビュー」誌の編集委員であるジョーン・マグレッタとのインタビューの中で、バリュー・チェーンを形成する要素であるサプライヤーやメーカー、エンド・ユーザーの間に存在する伝統的な境界線を打ち壊すために、情報と技術をどのように利用したかについて語っている。
デルは情報と技術を利用すること.によって、M.デルが目指す「バーチャル・インテグレーション」に向けて進歩している。この戦略の個別要素、すなわち顧客フォーカス、サプライヤーとのパートナーシップ、マス・カスタマイゼーション、ジャスト・イン・タイム生産は、どれも周知の手法である。しかし、このような要素をいかに組み合わせればよいのかを判断するM. デルの能力は、きわめてイノベーティブである。
技術はバリュー・チエーンの境界線を越えた調整を可能にし、ひいては投資家への多額な利益ばかりか、効率性と生産性の水準をも高めた。
デルは、異質な2種類のビジネス・モデル――垂直統合とバーチャル・コーポレーション――が持つ経済的利点を兼ね備えている。すなわち、従来の垂直統合が備えている「調整されたサプライ・チエーン」を損なうことなく、バーチャル・コーポレーションの原動力である「フォーカスと特化」を同時に実現しているのである。M. デルは、バーチャル・インテグレーションによって調整とフォーカスを同時に達成できると考えている。このような力を引き出すことができれば、デルのようなバーチャル・インテグレーションは、情報化時代の新しい企業モデルになるかもしれない。
HBR(以下、色文字)デルは、新しいビジネス・モデルをどのように開拓したのですか。



