「建設的な摩擦」を創造する

 イノベーションに成功するか、はたまた後塵を拝するか。ビジネス上の最重要課題は、このようにはっきりしている。

 ただし、それに成功することは難しい。なぜなら、イノベーションが起こるのは、異なるアイデア同士がぶつかりあったり、予測が外れたり、あるいは情報の処理やその判断のやり方が違ったりした場合だからだ。

 それゆえ、同じ物の見方をしないプレーヤーたちを集めて、そこにコラボレーションが生まれてくることを期待するのも無理はない。

 いろいろな意見を戦わせることで、建設的なコンフリクトが生まれてくるべきなのだが、そもそも全員が全員、相互理解できているわけではないので、非生産的な結果に終わる場合がほとんどである。本来は創造的なプロセスなのに、個人的な言い争いになってしまうばかりか、プロセスそのものも矮小化されてしまう。

 このような現象に際して、マネジャーたちの対応は一般的に2種類に分かれ、これらの特徴はまったく異なる。

 第1のタイプは、コンフリクトを嫌い、自分の流儀しか認めないマネジャーである。アイデアが衝突することを必死に避けようとするあまり、ある決まったタイプの人間を雇い入れる傾向にある。往々にして自分と同じタイプを選ぶため、その組織はいわゆる「仲良しの似た者同士症候群」に陥ってしまう。

 そこでは、だれもが同じような関心を持ち、同じようなトレーニングを受けて、同じ思考パターンになる。同じ認識フィルターを通した考え方が受け入れられる世界であり、そこでは似た者同士でなければうまくやっていけないのである。

 たとえば、新規事業開発グループのメンバー全員が同じようなトレーニングを経験してきた場合、各人が出すアイデアは、すべて似通った仮説と分析手法による産物となってしまうだろう。このようなグループはイノベーションを創造するには至らず、多くの場合、その努力もあだ花に終わる。

 第2のタイプは、従業員たちがさまざまなスタイルで思考することを重視するマネジャーである。このタイプは、どうも部下たちを上手に管理できないことが多い。

 たとえば、グループがまったく異なる個性で構成されているにもかかわらず、閉鎖的な場に縛りつけておく。こうしていても、必ず創造的に問題解決できると信じ込んでいるからなのだ。