マネジメントチーム内の「対立」「社内政治」を取り除く6つの戦術

 企業のトップ・マネジャーたちは、経営上の対立をうまく収拾できずに窮地に立たされることがよくある。企業の抱える問題について、マネジャー間に対立が存在するのは当然であり、不可欠であると彼らは理解している。見通しが不透明な状況の中で、自社の将来に関わる最善の方針についての意思決定を行うとき、まともなマネジャーが揃っていれば、必ずしも意見が一致しないのは当たり前であろう。マネジャーたちが互いの考え方を批判し合うマネジメントチームは、そうでないチームに比べて、選択肢の意味を深く理解し、多様な代替案を用意している。そして最終的には、社内外を取り巻く今日の競争環境に必要とされる効果的な決定を下しているのだ。

 しかし、不幸なことに、建設的な意見の対立があっという間に崩壊する場合もある。問題の本質に関して述べた意見が個人攻撃と受け取られ、その結果、非生産的な対立を招いてしまう。この環境下において、戦略の選択を行うことは容易ではない。不安とフラストレーションが、同僚のマネジャーに向けた怒りに発展する。マネジャーの人間性を議論の対象である問題点に結びつけてしまうのだ。多くのマネジャーは、自分は合理的な意思決定者であると自負している。それゆえに、自らの行動の感情的・非理性的な側面にうまく対処することはもとより、そうした側面が存在する事実を認めることさえ簡単にできなくなるのだ。

 問題点についての建設的な対立がマネジャー個人間の衝突へとすり替わった場合、その障害を回避し、チームワーク機能を破壊することなく、マネジャー同士が議論を戦わせることを奨励するのは難しい。こういったことは、マネジメントチームに参加したことがあればだれしも覚えがあるのではないか。

 我々は、過去10年間にわたって、トップ・マネジメントチームの戦略的意思決定における「対立」「社内政治」「スピード」の相互作用を研究してきた。その中で我々は、技術関連企業12社のトップ・マネジメントチームの仕事ぶりをつぶさに観察する機会を得た。この12社はいずれも、変化が著しく、せめぎ合いも激しいグローバル市場における競争に参加していた。したがって、どのチームも先行き不透明な状況の下、迅速な対処が求められるプレッシャーのなかで、いちかばちかの決定を下さねばならない。

 調査したマネジメントチームは、いずれも5人から9人のマネジャーで構成されていた。我々は、特定の戦略的意思決定が下されるプロセスを追うなかで、マネジャーの一人ひとりに質問し、相互にどう関わったかを直接、観察することができた。トップ・マネジメントチームに実際に存在した対立を垣間見て、そこに鮮明に映し出された、ビジネスの意思決定に感情が果たす役割を知ることができた。

 調査した12社のうち4社では、重要課題に関するマネジャー間の意見の不一致がまったくない、あるいは実質的にないに等しく、そのため、対立はほとんど見られなかった。しかし、それ以外の8社にはかなりの対立が見られた。このうち4社のトップ・マネジメントチームは、マネジャー個人間の敵対意識や不協和音を回避する方法で対処していた好例である。

 この4社を仮にブラボー社、プレミア社、スター社、トライアンフ社と呼ぼう。この4社のマネジャーたちは、同僚マネジャーから「切れ者」「チームプレーヤー」「業界最高の人材」と呼ばれていた。また、彼らは自分が所属するマネジメントチームのことを、「率直で」「楽しく」「生産的に」仕事をしていると語った。

 彼らは議題について激論を戦わせるが、政治的な動きや体裁をとりつくろうことに時間を浪費していなかった。あるマネジャーが言うように、「そんなことに使う時間などない」のだった。別のマネジャーも、「我々は、問題点のうわべをいたずらにいじくり回したりせず、真っ向から問題に取り組む。だからといって、政治的な行動はしない」と語った。ある企業の女性マネジャーもやはり、自分が所属するマネジメントチームのことを、「私たちは、声を張り上げてさんざん意見をぶつけ合った後、冗談を言い合って、最後に問題を解決する」と語った。

 8社のうちの残る4社は、マネジャー同士の個人的対立の回避に、前述の4社ほど成功してはいなかった。この4社を、仮にアンドロメダ社、メガ社、マーキュリー社、ソロ社としよう。この4社のトップ・マネジメントチームは、マネジャー間の激しい敵対意識に悩まされていた。互いに協力し合うこと、話をすることはめったになく、派閥に分裂する傾向があり、フラストレーションや怒りがあらわになっていた。彼らが同僚について評するとき、「陰で操ろうとする」「秘密主義」「くたびれて役に立たない」「政治的」といった否定的な表現を使った。