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技術や経済環境の根本的な変化によって、現在の知的所有権のシステムは急速に機能しない、役に立たないものになりつつある。
100年以上も前に工業化時代のより単純なニーズに合わせてつくられた現在の知的所有権のシステムは、十把一からげの画一的な制度である。すべての知識の進歩を同列に扱うことは、ほとんどの特許が新しい機械的な装置に対して認められていた時代には機能していたかもしれないが、現在の頭脳産業ははるかに複雑な課題を突きつけている。
特定のホルモンの分泌量が多いことと先天性欠損症との因果関係に気づいた医師のケースを考えてみよう。彼はこの観察結果に対して特許を認められたが、彼の検査方法は誤って陽性に出てしまうケースが多すぎ、実用には適さなかった。
その後の研究によって、彼の編み出した検査方法は他の2つと組み合わせて使えば、胎児がダウン症を持って生まれてくるかどうか、正確に予測できることがわかった。現在、この医師は自分が編み出した検査の部分を利用しているすべての検査機関から9ドルの手数料を得ようと、訴訟を起こしている。医師が勝訴すれば、検査費用は2倍以上になるだろう。
既存の遺伝子がどのように機能するかを最初に発見したこの医師は、何らかの知的所有権を認められるべきだろうか。おそらく「イエス」だろう。しかし、それは欠陥のある遺伝子に代わる新しい遺伝子を編み出した人間に与えられるのと同じ権利ではないはずだ。
既存の遺伝子の働きを解明することは、新しい遺伝子を編み出すことと同等ではない。そうした区別が必要だが、現在の特許制度にはそのような区別をするための根拠がない。すべての特許は同一で、認められるか否かだけである。
現在の知的所有権保護制度の下で生計を立てている人々の間で一般的な見方は、細かな手直しをいくつか加えてやれば問題は解決するというものだ。
このような考え方の大半は、要するに、現在のシステムを抜本的に見直すのはパンドラの箱を開けるに等しいというところからきている。全員が、自分たちが敗者になりかねないことをまざまざと思い浮べることができる。異なるシステムから発生するかもしれない私的、公的メリットを考える者はほとんどいない。
一般的な見方は間違っている。細かな手直しではなく、新しいシステムをゼロから構築することについて、広く開かれた思考をすべきときがきている。
なぜ従来のシステムは機能しないのか
今日、知的所有権を保護することは従来にも増して重要になっていると同時に、より難しくもなっている。その理由を理解するには、経済環境における次のような4つの変化を考えてみればいい。



