-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
上級管理職は、業績向上に向けて頑張るよう絶えずプレッシャーをかけられている。そのため、新しい組織開発ツールや手法の取り込みには常に積極的である。
しかし、リエンジニアリングやセルフ・マネジメント・チームなど、多くの経営革新手法は、限られた効果しか発揮してこなかった。その理由の一つは、それらが「メソッド」と「結果」にのみ焦点を当て、変革の「必要性」には触れていなかったからである。
従来の経営革新手法は、従業員に対し、彼らが業績改善のためにやるべきことを示しはするが、「なぜ」そうしなければならないのかについては示してくれていない。
ここ15年余りの間に出てきた新しい経営手法やプログラム(その数はとどまるところを知らない)は、我々に無力感を残しただけであった。従業員のための新しい経営手法やプログラムであったはずなのに、結局は外部を利しただけに終わってしまっているのである。
この4年間、私は、持続的な業績向上を目指して、より直接的かつ効果的なアプローチに取り組んでいる企業の研究を行ってきた。その多くは中規模または小規模の企業であるが、その中には大企業も含まれている。そのアプローチとは、「オープンブック・マネジメント」(以下、OBMと略す)というものである。
OBMの思想は後述するように、いたってシンプルである。しかし、従業員の意識を変え、会社の業組を大きく向上させる可能性を秘めている。OBMの導入によって、従業員たちは品質や効率などの個々の指標だけに目を向けるのではなく、上級管理職と同じように事業全体の成功に関心を持つようになる。つまり、OBMは現場の従業員にも経営幹部と同じ感覚を植え付ける効果があるのだ。
OBMは、まず、従業員に業績向上の必要性、すなわち「WHY」をしっかりと意識させることから始まる。それを踏まえて従業員と管理職は力を合わせて、その具体策、すなわち「HOW」を求めていくのである。新しい経営革新のためのツールや手法を導入することは、容易なことではない。しかし、OBMが導入されれば、それも比較的容易になってくる。なぜなら、あらゆる階層の従業員を、事業成功のための課題解決に向けて束ねていく基盤ができるからである。
これまでOBMを導入してきたのは、ほとんどが小規模な企業や設立間もない企業だった。しかし、最近では大企業でもOBMの導入が可能であり、業績向上に効果があるという認識が広まってきている。
ラディカルな思考
従業員は積極的に会社経営に関わっていくべきだ、という考え方がOBMの出発点にある。これはまだ組織の経営手法の主流とは見なされていない。科学的経営管理の父とされるフレデリック W. テイラー【*】ならば、なんて馬鹿げた考えだと一蹴するだろう。同様に、伝統的な考え方になじんできた経営幹部や中間管理職、労働組合幹部、さらには現場の従業員も、すぐにはこの考え方に同意しないだろう。



