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加重平均資本コストはもはや時代遅れ
企業活動を評価する数々の手法を学んで数年経った人ならば、さっそく補習コースを新たに受講するのが賢明だろう。
そのような人は、既存のビジネス、工場、商品ライン、あるいは市場ポジションといった営業資産の価値を評価する最良の方法は、割引キャッシュフロー法(Discounted Cash Flow/以下DCF法)であると、習ったはずである。
もちろんDCF法は、現在でもその有効性を失っていないが、その計算式の中で用いる割引率に加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital/以下WACC)を採用している。過去20年以上もの間、DCF法はスタンダードとして受け入れられてきたが、WACCを用いる方法はもはや時代遅れである。
たしかに、ビジネススクールや教科書の多くが、WACCを利用したアプローチを教授し続けている。しかし、その理由は、WACCを使うことは、知っておくべき古典的なスタンダードだからであり、けっしてそれが最良の結果を生み出してくれるからではない。だからいまでは、そうしたビジネススクールや教科書は、その代替となる方法論も教えてくれる。
「修正現在価値」(Adjusted Present Value/以下APV)と呼ばれる代替方法は、きわめて有益である。また、その信頼性は高い。マネジャーがDCF法を利用する際、これまではWACCだったが、これからはAPVを選択するようになるだろう(特集3―1「戦略的マネジャーの事業価値評価ツール(1)」を参照)。
「いったいどの評価手法を採用すべきか」という問題は、ビジネスの責任者であるマネジャーにすれば、結局のところ、実務に役立つかどうかに照らして、さまざまな代替手法を比較することで解決する。
ではWACCの代わりに、いったい何を利用すべきか。WACC同様、APVも、事業価値や稼動資産、すなわち将来キャッシュフローを生み出す資産の〝価値〟を計算するために設計されている。
では、なぜWACCの代わりにAPVを選択するのか。その理由の一つには、WACCが有効なときはAPVも有効だが、WACCがうまく機能しないときでも、制約条件が少ないAPVは有効に機能するケースがあるということが挙げられる。また別の理由として、APVはWACCと比較して、致命的な間違いに導くケースが少ないという利点もある。
しかし最も大切なことは、APVの真骨頂がマネジメントに関する情報を追加していくところにあることを、ゼネラル・マネジャーが理解できることである。
マネジャーはAPVを利用することで、この資産の価値はどれくらいあるかを計算できるばかりか、その資産の価値はどこにあるのかを分析できるようになる。



