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直属の部下から恐れられる、完全主義で優秀なマネジャーにはどう対処したらよいのだろうか。また、常にチームワークを軽んじる有能な専門職や、あらゆる衝突を避ける神経質なマネジャーにはどう対処すべきだろう。このような問題を見過ごすべきか、そんなマネジャーは解雇すべきか、それとも彼らをコーチしたらよいのだろうか。コーチングのためには、状況の中で問題となる行動を理解する必要がある。その問題行動が矯正できるものか判断し、適応できるよう勇気づける必要がある。良いマネジャーへの成長を妨げている行動を矯正するコーチングこそが、最良のアドバイスとなる。
コーチングをしたがらないエグゼクティブがいるのはなぜだろうか。コーチングの手順は曖昧で、時間がかかるのに、良い結果が出るとは限らないためである。エグゼクティブは心の中では、プライバシーに立ち入ること、重い責任を負うこと、精神科医のような役目を果たすことを恐れている。良いコーチとは良い管理そのものである。鋭い観察力、賢明な判断力、適切な行動力など、効果的な管理を行うために重要な、多くの共通技術が要求される。同じように、コーチングの目標は良い管理の目標でもある。組織の貴重な資源を最大限に活用するためである。単純なことのようだが、多くのエグゼクティブはどこから始めればよいのか見当がつかない。
我々が学んだ、エグゼクティブがより良いコーチとなるための教訓を紹介する。有能なコーチは状況や問題行動を評価し、本人の指導力を測定するのにどんな質問をすべきかを知っており、さまざまな技法を使ってマネジャーの問題行動を変えようとする。
状況や問題行動を評価する
実際の状況を確認するために、問題のマネジャーと周囲の人々との力関係を観察することが不可欠である。もちろん、焦点となるのはマネジャーの行動であるが、行動は単独で現れるものではない。重要な評価点は、問題行動が組織の他の人々に与える影響である。そうした状況における問題行動理解の系統的方法とは、ジャーナリストが事件情報を収集するときのように、いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように、と質問することである。
分析能力に優れているが高圧的なマネジャーを考えてみよう。さまざまな状況において、マネジャーがどのような行動をしているか観察しよう。だれを支配しようとし、だれを尊重しているだろうか。その行動は周囲の人々の姓、地位、民族的背景に影響されているか。だれか特定な人が苦手か。どのように高圧的か。どんなときにそのように行動するのか。いつもそうなのか。それともストレスを感じているときか。専門外のことを頼まれたときか。行動は場所によって異なるのか。担当領域外では高圧的行動が変化するのか。その行動が周囲の人々や職務遂行にどう影響するのか。そして、なぜそのように行動するかがおわかりだろうか。
問題行動の裏に潜む原因を見つけるのは大変難しい。問題行動が最近始まったのであれば、そのマネジャーの生活の何が影響しているのかを考えるのが賢明かもしれない。離婚しようとしているのか、病気なのか、経済的苦境にあるのか、結婚生活に適応しようとしているのか。私生活に何が起こっているかを見つけることは、その問題行動を解釈するための鍵となる洞察を与えてくれるかもしれない。もちろん、心の通う関係をつくるのはいつも容易というわけではなく、一般的にはコーチングを受け入れるという(信頼)関係が成立して、初めて可能となる。
問題となる人物の望ましい行動と望ましくない行動の双方に絶えず注意を払えば、その人物の全体像が明らかになる。エグゼクティブはときに欠点のみに焦点を当て、長所を見逃してしまう。しかし、コーチの目標はその人がより成果を上げられるよう援助することであり、訴えを起こすことではない。問題行動の頻度により、観察期間は3カ月からそれ以上になる。ときにはもっと早く結果が出ることもある。我々の経験的方法から、1つの出来事からは1つの理解が得られ、2つの出来事からは2つの理解が得られ、3つの出来事からその人の行動パターンが理解できる。観察期間は、十分な情報が収集できたかどうかという判断によって決められる。
問題行動が組織の他の人々に及ぼす影響を測定するには、次のような単純な質問の答えを考えてみるとよい。過去3カ月の間に扱った問題のいくつがこの人の行動によるものだったのか。組織が望ましくない行動を黙認したら、それは他のメンバーにとって何を意味するのか。組織にその人物がいなければ、どのような職場環境になるのか。そのマネジャーが休暇で不在なら職場環境はどうなるのか。



