強力なブランドは、企業競争を勝ち抜くために不可欠だといわれている。もしそうだとしたら、強力なブランドを〝どのように〟つくり上げるかが重要な問題になる。これは簡単なようで非常に厳しい課題なのだ。

 アメリカでは、ブランドを構築していくうえでマス広告がその中心的役割を担ってきた。

 しかし、この常識はそろそろ時代遅れになりつつある。市場の細分化に対応したり、コスト増を抑えたりするために、テレビといった従来のマスメディアは以前ほど使われなくなっている。

 顧客たちは、もうすでに新しいコミュニケーション・チャネルを利用し始めている。個人が、エンタテインメントにはどんなオプションがあるのかを丹念に調べたり、メディア上でショッピングしたりするようになると、マス広告はその人にとって必要ではなくなるのである。

 新しいメディア・シーンの出現を斯界の専門家たちは「2~3年先」と予測したが、どうやらもう少し時間がかかりそうだ。

 それはあらゆる人に影響を与えるものではなさそうである。広告のない有料のメディアには、アクセスしたくない人やアクセスできない人もいるからだ。しかし全体的に、メディア・シーンは、数年内にまったく異なる様相を見せるに違いない。

 このような不確実な環境下で、強力なブランドを構築するという観点からすれば、アメリカ系の企業は、ヨーロッパの同様な企業をもう少し勉強するとよいだろう。

 結果論でいえば、ヨーロッパの企業はそうせざるをえなかったわけだが、ポスト・マスメディア時代における厳しい現実を思わせる環境下で長い間生き延びてきた。

 以前からヨーロッパのメーカーにとって、利用可能なメディアといってもその選択肢は限られており、おまけにどちらかというと効率の悪いものだった。