現在、全米にリエンジニアリング旋風が吹き荒れ、各社は機能別一辺倒の組織から、横割りの仕事の流れに適した組織へと改革を進めている。製品開発や受注の充足といった複数部門にまたがるプロセスが、従来の狭く限定された部門や機能に代わって、新しい組織のブロック単位となっている。その結果、マネジャーは新たな仕事の進め方を開発しなければならなくなった。しかし、こうした新しい組織をどのようにつくり上げ、それをどう動かしていくかについては、まだまだ学ぶべき多くの課題が残されている。戦略とマネジメント慣行をどうするかが重要な挑戦課題になっている。たとえば、どのような戦術目標を立てれば、そのプロセスに最もかなうのか、新しい組織で上級マネジャーの役割と責任はどのように変わるのか、プロセスのマネジメントにはどのような技能が必要か、といった問題である。

 こうした問題を検討するために、プロセスをベースにした組織への移行に先駆的な役割を果たしてきた4人の上級エグゼクティブを招いて、それぞれの経験を話し合ってもらった。ゼロックスの会長でCEOのポール・アレアー、ユナイテッド・サービセス自動車協会(USAA)の会長でCEOのロバート・ヘレス、スミスクライン・ビーチャムの専務ジャン・レシュリー、北米ペプシコーラの会長でCEOのクレイグ・ウェザーラップの4氏である。4氏は、それぞれドキュメント・プロセシング、保険、製薬、ソフトドリンクとさまざまな業界を代表し、競争上の課題も多岐にわたっている。しかし、思いのほか、プロセスとプロセス・マネジメントについての各氏の意見には多くの類似点が見られる。話し合いはマサチューセッツ州ボストンにあるハーバード・ビジネス・スクールで行われた。

ディビッド A. ガービン(以下略) 最近、プロセスについての関心が猛烈な勢いて渦巻いている感じですが、皆さんの会社の場合、プロセス重視に転換したのはどのような理由からなのか、お聞かせください

ジャン・レシュリー 当社の顧客がすっかり変わったのです。以前は、医者が主導のビジネスでした。いまでは、支払い者主導です。今日のアメリカでは雇用主と保険会社が支払い者の立場にあります。ヨーロッパでは、政府が払います。ですから、こうした新しい顧客に満足してもらうにはどうすればよいか、その方法を見つけるのがよいのではないかと考えました。その結果、強烈に認識を新たにしました。ビジネスのやり方を全面的に変えなければいけない、と痛感したのです。

 長年、私どもには4つの事業部門――製薬、顧客のヘルス・ケア、動物の健康管理、臨床実験――がありました。各部門は互いに独立して、独自の戦略を開発していました。しかし、ヘルス・ケア・システム全体として眺めて、これがどのように変わっているかを理解しようとすると、こうしたビジネスを新しい世界にうまくはめ込めないことがわかりました。システムのどの部分をそこに加えて、どれを除くか、まったく見当がつかなかったのです。そこで研究を重ねた末に、3つの重点的なエリアを決めました。すなわち、ケアの実施、ケアの管理、ケアの範囲です。この各々は狭く限定されたビジネスというより、ヘルス・ケア・システムを動かす幅広いプロセスの集まりです、次いで、各エリアの戦略を明確にし、それを成功させるのに何がどれだけ必要かを探って、6つの重要な項目を定めました。先駆物質の発見、製品開発、低コスト生産、顧客への緊密な対応、同盟グループの構築、絶ゆまぬ改善です。

 結局は、この6項目がプロセスになったわけです。その理由は、各項目を実現するには、保有能力と信頼できるプロセスを組み合わせるしかないと悟ったからです。バイオテクノロジーのリーダーとなるには、まず世界一優秀な、細胞と分子専門の生物学者が必要です。しかし、それだけでは十分ではありません。信頼性が高く、繰り返しの利用が可能な発見と開発のプロセスを備えることも必要です。そうでないと、製品がパイプラインから規則正しく出てきません。このように規模を大きくしたプロセス自体をいくつもの小さなプロセスに分けます。製品開発の場合は、全部で3000以上に分けます。いまでは、こうした各プロセスをチャートにして、繰り返しと制御ができるようにしているところです。しかし、完全にプロセス重視型の組織にするには、まだこれから少なくとも5年はかかると思います。

ポール・アレアー ゼロックスがプロセス重視に移行したきっかけも似たようなもので、顧客からの要求と競争力が根本的に変わったことでした。こうした新しい条件に対応しなければ、生き残れませんから。しかし、まず、新しい条件は何かを理解しなければなりません。ですから、1989年に、環境の新たな傾向を幅広く視野に入れながら、移行にとりかかりました。その見直し計画をゼロックス2000と名づけ、それを使って、次の10年にテクノロジー、マーケット、顧客、競争相手がどうなるかの予測を立てて、これを吟味しました。それぞれの立場を詳細に検討したポジション・ペーパーで研究をし、各エリアの専門家と会合を重ねた末に、上級チームは将来の可能性として60の予測項目をリストアップしました。この中から最も可能性の高いと思われる項目を投票で選びました。たとえば、紙は将来もオフィスで広く使われるか、デジタル・テクノロジーは完全にアナログ製品にとって代わるか、といった争点の多いものもありました。妥当と思われる予測から、新たな緊急事項を導き出しました。つまり、将来の成功のために、どうしてもしなければならないことです。それと同時に新しい戦略の方向を決め、それをドキュメント・カンパニーと呼ぶことにしました、我々の目標は、コピー機やプリンター、ファックスなどのメーカーから、顧客の生産性を高めるドキュメント・ツールとサービスの提供者になることへと変わりました。それからまもなく、戦略を反映させる組織に設計し直す必要があると痛感したのがきっかけで、プロセス重視へと転換したわけです。

 そうしますと、ゼロックスの場合は、プロセス重視に移行した動機は基本的に戦略的なものだったのでしょうか。

アレアー まったくそのとおりです。自分たちが何をしようとしているかわからなければ、プロセスの設計見直しはできません。そうやって求めたものが、戦略的な方向、組織の設計、スタッフの能力、利用するプロセスとうまく溶け合って、従業員が会社の目標を満たすために一致協力できるようにしなければなりません。ですから、まず最初に競争状態を見て、自分たちの戦略方向をチェックしてから、新しい目標を達成するにはどのような組織にすべきかを考えます。今日、最も手強い競争相手は中小の企業です。ゼロックスのような大企業がビジネスのやり方を変えられなければ、中小の企業が勝利を収めるでしょう。中小の企業は市場の動向に迅速に対応できるからです。

 我々は競争勢力に対応するために、もっと小規模単位のビジネスに分けることにしました。しかし、同時に、大規模な組織の能率の良さを失いたくなかったので、顧客にもっと重点を置きながらも、効率は維持したいと思いました。それが、プロセス重視の魔術で、両方の条件を満たせるとわかったのです。プロセス重視によって、システムのコストを大幅に削減し、その一方で、顧客の満足度を高めることもできるのです。2つの目標に同時に目を向けられるわけです。今日、9つの部門がありますが、それぞれが共通の研究所をバックに、販売員を共有し、プロセスの提携をしています。この種の構造のマネジメントをするには、コア・プロセスを重視するしかないと気づきました。