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さまざまな分野の製造担当管理者たちが、低コストと高品質を達成したからといって、成功は保証されるものではないと考えている。低コスト競争が熾烈になり、高品質のサプライヤーが急激に増え、企業は次第に、競争優位の新しい形を達成する方法としてフレキシビリティの実現に努力するようになっている。管理者たちは、フレキシブルな工場とは顧客の注文に素早く対応でき、幅広い範囲の製品を提供でき、新しい製品を容易に製造品目に導入できるものだと期待している。工場をもっとフレキシブルにしようという動きは製造業全体に広がり、最近では化学、製紙業のような、最も長く操業している製品を持つ工場が最も競争力があるという仮定が何十年もの間成り立っていた産業にも及んでいる。
フレキシブルであることの重要性を認めながら、どの産業の管理者も改善の難しさに気づき、いらだっている。ある者は新しい仕事のやり方がより大きな敏捷性を生むことを期待して、組織横断チームを組織した。また、コンピュータによる統合製造システム(CIM)が彼らの工場をフレキシブルなオペレーションに変えることを期待して、ハードウエアとソフトウエアに何百億ドルもの投資を集中して行ったところも多かった。何度も何度も管理者たちは失望し挫折したが、それは、彼らが、フレキシビリティを強化しようとしたのにうまくいかなかった理由を、きちんと理解しなかったからである。それは、オペレーションの自動化の程度なのか? ソフトウエアの複雑さとコストを低く見積もりすぎたせいなのか? あるいは新しい技術を利用する従業員の無能さのせいなのか?
工場をフレキシブルに改善することがなぜそんなにうまくいかないのか、製造担当管理者の理解を助けるために、私は北アメリカの61の製紙工場の研究に従事した。一見、製紙業は研究の出発点としては合わないようにみえる。製紙業界はフレキシブルという特徴を持っているとは思われていないし、最近までフレキシビリティの強化を優先してはいなかった。しかし、あまり知られてはいないが、製紙産業が理想的な出発点である、いくつかの特徴がある。
異なった工場が異なった製品を生産する(実際には同じ工場が異なった製品を生産しているのかもしれないが)多くの産業と違って、製紙産業の製品は他の工場と比較でき、いつも同じ基礎的なプロセスによって作られている。あるタイプの紙を他の紙と区別する方法は数少ない。最も基本的な方法は紙の重さ、あるいは単位面積当たりの密度である。これらの特徴、または等級は(個々のパルプと重さのコンビネーションが等級である)測定が簡単である。このことにより、一つの工場が作ることのできる製品の品目の幅と、ある製品から他の製品に生産を切り替えるのに必要な時間を測定する、具体的方法の開発が可能になった。
調査からの発見は、伝統的な知識の多くを覆すものだった。研究対象の工場では、コンピュータによる統合の度合いとオベレーション上の柔軟性に、直接の相関はあまりなかった。大きな工場は小さな工場に比べてフレキシブルではないとは言えないことがわかった。一般に考えられていることとは逆に、より新しく、より大きな処理プロセスのほうが、より古く、より小さな機械よりも、素早く転換を行うことができた。経験を積んだ作業員が力強い強みを示すこともあったが、工場をフレキシブルにすることを妨げる場合もあった。
調査でまず意外だったことは、従業員(管理者と作業員双方)の役割に関することである。工場のフレキシビリティは、技術的な要因よりも従業員に依存するところが多かった。コンピュータによるハイレベルの統合は、品質とコスト面の競争力に必要な重要な強みを提供できるが、すべてのデータは一つの結論を示していた。それは、オペレーション上のフレキシビリティは、まず工場の作業員の能力で決まるが、それは管理者が彼らに対し、どれだけ指導し、評価し、コミュニケーションをとるかにかかっているということだ。装置やコンピュータによる統合は2次的なものである。
しかしながら、多くの工場で、新しい能力を獲得する必要が高まっており、コンピュータによる統合はそれに応える解決策であると、管理者たちは考えていた。実際、コンピュータ・システムは、管理者が、工場から求められているフレキシビリティの内容を精密に見極め、それに到達するために目標を定め、評価と報酬のシステムに手を入れ、教育プログラムを構築し、業務訓練を全面的に見直すという、難しい仕事から免れるためには、一時しのぎの役に立つことはあった。
単純に言えば、ほとんどの管理者は機械と技術には過剰な信頼を置いていたのに、日々の人事管理への信頼が足りなかったのである。
フレキシビリティとは何か
10年か15年ほど前、品質は、今日のフレキシビリティと同じく曖昧な概念で、競争力にとって重要なものであると証明することは、難しかった。そのときから、管理者と学者は品質改善の方法について研究と実験を行ってきた。その結果、今日では莫大な種類の品質改善技法について、選びきれないほどのテキストとオーソリティが存在している。



