バンドル戦略で息を吹き返したレストランチェーン

 米国南西部のレストランチェーン、チリーズ・グリル・アンド・バーにとって、2010年代は順風満帆とはいえなかった。マルガリータとベビーバックリブを売りに2000年代に急成長したが、その後はチポトレ・メキシカン・グリルやパネラブレッドといった低価格のファストカジュアルチェーンや、高価格でシェフを中心に打ち出すレストランとの競争が激化し始めたのだ。

 中間層向け市場で低迷が続き、既存店売上高は10年間で1%しか伸びなかった。外食関連株の中でも、チリーズ株は下落が見込まれ、空売り筋の人気銘柄になった。

 しかし、2022年に新CEOが就任すると、チリーズはバンドル価格戦略に重点を置くようになった。急速に進むインフレに対する顧客の懸念に応え、前菜と主菜、ノンアルコールのフリードリンクで10.99ドルからのセットメニュー「スリー・フォー・ミー」を発売した。

 2024年4月、消費者が依然として物価高騰を懸念する中、チリーズはスリー・フォー・ミーのプロモーションに力を入れ始めた。このプロモーションは成功した。実際にバンドル価格のセットを注文した客は19%にすぎなかったが、来店者数は急増し、2025年度の第1四半期だけで既存店売上高は31%増加した。

 2024年1月から2025年1月までに、チリーズの親会社であるブリンカー・インターナショナルの株価は40ドルから史上最高値の180ドルへと急騰した。ある業界誌は、同チェーンが「外食産業の歴史上、最大級のカムバックを果たした」と報じた。「チリーズは、厳しい環境でカジュアルダイニングが成功するためのシナリオを確立した」

 このシナリオのメインとなる要素が、バンドル価格戦略だ。これは物価上昇の時代に、もっと多くの企業が採用を検討すべきテクニックである。

 2020年代前半、インフレが世界的な問題となった。米国では2020年5月から2025年5月までの間に、消費者物価が25%上昇している。対応策として多くの企業は値上げを実施したが、なかには何度も値上げする企業もあった。消費者はこれに不満を表し、とりわけ食料品、コンサートのチケット料金、医薬品、公共料金の引き上げに憤った。

 企業もこれには頭を抱え、筆者はここ1年の間にさまざまな企業のCEOから「収益目標を達成するために、価格引き上げへの理解をお客様にお願いし続けるわけにはいきません。それは持続可能な方法とはいえません。それ以外に利益を拡大する方法を見つける必要があります」という訴えを聞いた。2025年前半の貿易戦争拡大に伴い、次のインフレの波が押し寄せる可能性が生じ、懸念は高まるばかりである。

 バンドル価格は、このような状況で役立つツールである。通常は別々に提供される複数の商品をパッケージ化して単一価格をつけることにより、価値を高めるとともに、個々の商品の価格をあからさまに引き上げることなく価格を調整できる。企業はバンドル戦略を用いることで、消費者の利便性を高め、コストを削減し、顧客関係を強化し、いつもは購入しないような商品を買い手に勧めることができる。また、本稿に挙げるのはB2Cの事例がほとんどだが、バンドル戦略はB2Bにも同様に有効である。

 一部の業界では、すでにバンドル戦略が一般的になっている。同じ通信事業者の携帯電話とインターネットサービスを契約したり、同じ金融サービス会社の自動車保険、生命保険、住宅所有者保険に加入したりすると、バンドル商品を購入したことになる。