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まず、ごくありふれた会議風景を紹介しよう。役員と事業部長が出席する月例経営会議。その企業の8つの事業部は、軽工業、卸売業、消費者サービスを含む多様な市場で運営されている。どの事業部も競合激化の圧力を受けているので、本社は品質向上運動の成果を評価する一方法として、顧客満足度調査を実施している。
数項目の議題を省略して、全員で第3四半期の顧客満足度指数を検討することになり、オーバーヘッド・プロジェクターにシートが置かれる(図1〝第3四半期満足度指数〟参照)。調査対象となった顧客の82%が、4(満足している)あるいは5(完全に満足している)と回答している事実を、最高経営責任者が誇らかに指摘する。満足していないのはわずかに18%の顧客なので、会議の参加者はすべて、会社の運営状態は良好だと考える。
満足度4.5以上の平均値を示している事業部が3つもある。もはや収穫逓減点に達しているので、満足度向上のためのこれ以上の投資は無意味であるという点で、会議参加者は全員一致で合意する。
次に会議は、顧客満足度平均値が最低の2.7である事業部の業績評価に移る。その事業部は卸売用の潤滑油を生産し、それを再包装して小売業者に売る会社に販売している。極めて競争の激しい、価格が成否を決定する業種で利幅も著しく小さい。潤滑油事業部の市場は扱いにくく、価格に敏感な顧客は絶対満足しないだろう、というのが会議の結論だ。それに、その事業部の顧客満足度は、ほとんどの同業他社の満足度と同じか、あるいは高いのである。潤滑油事業部の顧客を満足させるのはもともと無理なことで、満足度向上のための追加投資は採算が取れない、というのが会議参加者の一致した意見である。
最後に議論は、満足度が中程度か、完全に満足してはいないがまあ満足しているという評価の4つの事業部の実績評価に進む。2つの事業部は大型産業用機械を製造している。他の2つは、自社および同業他社の製品に対するアフターサービスを提供している。各事業部の平均満足度は3.5ないし4.5である。つまり、大多数の顧客は不満を感じたり、中程度に満足しているわけではないが、そう感じている顧客もかなりいるという事実を示す数値である。〝対応策は最低の満足度の原因を探り、それを改善することだ〟と、産業用機械事業部部長が提案する。他の参加者が賛同する。
以上の会議内容には、筆者たちが調査した数十社に及ぶ製造およびサービス企業の多くの管理者が持っている、いくつかの先入観が潜んでいる。
一つは、顧客は単に満足させれば、それで十分だという考え方である。顧客が少なくとも満足している(4)と回答しているかぎり、企業と顧客の関係は強固である。つまり、満足度が、完全に満足している以下でも許容できる。結局、現実世界にはめったに完全な製品もサービスも存在しないし、人を満足させるのは難しいことだから、というわけだ。
第2に、満足度を、単に満足しているから、完全に満足しているというレベルまで向上させるのに必要な投資は、採算性の面で好ましくないので、賢明な資産運用ではないだろうという考え方がある。確かに、たとえば価格競争が激しい商品市場でしのぎを削っている場合に顕著だが、すべての顧客を満足させようとしても引き合わないことがある。
最後は、比較的高い平均満足度(3.5ないし4.5)を示している事業部は、最低の満足度(1ないし2)の範囲の顧客対策に集中すべきだ、という見解である。不満の原因を徹底的に究明し、その範疇の顧客との関係改善に努力を注ぐのが、最も有効な資源活用だという見方だ。




