-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
自社の情報技術のどの機能をアウトソーシングし、どの機能を社内に残しておくべきかと悩んでいる経営者は、通常次のような自問をする。その情報処理が戦略的な優位性を会社にもたらしているか、それとも、その処理は単なる事務的な処理であって、自社を競合から差別化するものではないか。検討の結果、その情報処理が経営戦略の中核となるサービスを提供するものであれば自社内に残す。もしそれが単なる事務的な処理であり、しかも外部の情報サービス・プロバイダー(以下、プロバイダー)が同じ処理を自社の情報システム部が行うよりも少ない費用でできるとすれば、その場合にはアウトソーシングする。
残念ながら、情報技術のアウトソーシングに関する意思決定は、このように単純なものではない。1991年から1993年までの間に、我々は情報処理に取り組む欧米企業の40社を対象に調査を行った。その結果、ほとんどのケースにおいて、戦略的か事務的かといった判断に基づくアプローチは、問題と失望の原因となっていることがわかった。
このアプローチの欠陥を理解するためには、そこで前提とされている次の仮定を考えてみてほしい。すなわち、マネジャーは自分たちの市場や将来の技術動向、プロバイダーの供給能力や特色について、かなり確実に判断を下すことができるという仮定である。ところが彼らにはそれができないのである。ビジネスの世界は変動が激しく、予測不能であり、複雑に入り組んでいる。2年後のビジネス環境がどう変わっているかについての予測もできず、ましてどんな情報技術が実現可能となるかについては見当もつかないまま、マネジャーたちは5年や10年といったアウトソーシング契約を結んでいる。彼らは最高の技術と才能をより安く手に入れようと、プロバイダーのところに赴く。しかしながら、プロバイダーが持つ彼ら自身の利益を最大化しようというニーズが、最終的な結果に対してどのような影響を及ぼすかについては考慮しない。
こうした理由のため、情報システムが戦略的であるか事務的なものであるかという問い掛けは2次的なものである。会社の最終的な目的は、柔軟性とコントロールを最大化することに置くべきであり、そうすることによって、会社が情報技術についてさらに学んだことや、取り巻く環境の変化に対して異なった対応を取ることができるようになる。この柔軟性とコントロールを最大にするためには、競争を最大にすることである。そのためには、マネジャーはアウトソーシングするかしないかについて、一時的な意思決定をするべきではない。そのかわりに、潜在的な情報処理サービス提供者――外部のプロバイダーと内部の情報システム部門――が、提供する情報処理サービスの内容で、常に競い合う環境をつくるべきである。
情報産業の爆発的な成長は、企業にこのような環境をつくり出すことを可能にしてきた。1989年にイーストマン・コダック社が同社の膨大な情報処理をアウトソーシングするという画期的な意思決定を行った際には、ひと握りの大手プロバイダーから選ばざるをえなかったが、現在ではもっと多くの企業が存在する。EDS、アンダーセン、コンピューター・サイエンス・コーポレーション、IBM、ペロー・システムといった会社のほかにも、メインフレーム・コンピュータの保守管理、アプリケーション開発、新規技術の導入やネットワーク管理といった専門化されたサービスを提供する、たくさんのニッチ・プレーヤーが存在している。
その結果として、企業は自社の情報化のニーズを細分化して、複数のプロバイダーに発注するという選択肢を持っている。この方法は、プロバイダーを変更したり、プロバイダーのサービス内容がお粗末であったりしたときに再び自社内に取り込む際のコストを、非常に少ないものにしている。
多くの企業のマネジャーは、アウトソーシングする際にすでにこうした選択的アプローチを取り入れてきているが、まだまだ彼らの道のりは長いと感じている。彼らは従来の戦略的か事務的かという価値判断に欠陥があると気づいているが、その代わりとなる判断基準を持っていないのである。
この判断基準をつくり上げるために、我々は40社におけるアウトソーシングに際しての意思決定を調査した。調査対象のほとんどは大企業で、そのうちのいくつかは公共企業体である。調査対象は意図的に、航空、金融、化学、電機、食品、石油、小売り、公益事業(電力・ガス等)といった幅広い業界から選択した。この中から成功事例と失敗事例を探し出し、何が成否を分けているかを見極めようとした。
ほぼ4分の1の企業は、すべての情報処理の管理と提供に関して、長期(5~10年)かつ巨額の契約を締結していた。約4分の1の企業は同様の業務を自社内で行っていた。調査対象の残りの約半分の企業は、データ・センターの運営、情報通信、アプリケーション開発およびサポートといった処理について、選択的なアウトソーシングを行っていた。
我々はアウトソーシングに関する意思決定を下した経営者層(主に経営トップ〈CEO〉、財務統括役員〈CFO〉、監査役)、情報システム部統括役員(CIO)、アウトソーシングに際しての評価・交渉に携わった情報システム部のスタッフ、外部のアウトソーシング・コンサルタント、およびプロバイダーの営業責任者に対して、150近い面接を行った。



