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グローバル理論を最優先せよ
ボーダーレス・エコノミーの現代では、アダム・スミスのいう〝神の見えざる手〟は、彼自身が想像した以上にいたる分野で強く働いているようだ。
アダム・スミスの時代では、経済活動と呼ばれるものは、例えば、アイルランドのウール、ポルトガルのワインといったように、ネーション・ステート(国民国家)、つまり規定された、ある一定の範囲内で展開されていた。
しかし今や、政治機構を含めたすべての機関は、経済活動の展開に沿って、運営されなくてはならない。ビジネスと政治は、その歩調を合わせながら共存するようになってきている。
明白な例としては、18世紀から19世紀にかけて産み落とされたネーション・ステート・システムが、政治的な憤りや民族的な偏見、部族間の憎しみ、宗教的な敵意などの前に消滅しかかっている。その劇的な例が、今はどちらも国家としての存在を失ってしまった、かつてのソビエトやチェコスロバキアだ。
じつは、ほかにも多くの例がある。
統一ドイツでも、連邦政府は今までにないほど、それぞれの州に権限を委ねている。スペインの17の自治区、なかでも歴史的なアイデンティティが色濃いカタルニアなどは、ほとんど独立国家のような権限を持ち始めている。カナダのフランス語圏であるケベック州は、英語圏である他の州から分離独立するべく、積極的な活動を展開している。フランスのフランソワ・ミッテラン政権の閣僚たちですら、国内22の地方政府によって下された決定事項を、もはや拒否することはできなくなっている。
政治的文脈のみに従って、これらの出来事を判断することは危険である。もちろん、半世紀近く続いた冷戦構造の終焉は、多くのものに大きな変化をもたらした。例えば、スーパー・パワー(大国)からの圧力がなくなり、長い間抑えつけられていた政治的な動きが一挙に吹き出した。
しかし実際には、より根本的な3つの要因が動いている。
第1に、人やアイデア、情報、資本が瞬時に国境を超えて移動する世界では、冷戦時代の忠誠ではなく、必要な資源が手元から消えてどこかにいってしまうという恐れが、意思決定に影響を与える。
一瞬のうちに莫大な資本が取引されているグローバルな金融市場では、各国政府が自国の通貨を守ったり、為替レートをコントロールすることなどできない。政治家たちも、自分のコントロールの及ばない人々や機関投資家の経済的な選択によって、金融市場が左右されていることに気づき始めている。



