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『競争原理が革新するヘルスケア・ビジネス』(Making Competition in Health Care Work, 1994年7-8月号、邦訳は1994年11月号)でマイケル E. ポーター、エリザベス・オルムステッド・ティスバーグ、グレゴリー B. ブラウンの3氏は現在行われている国をあげての医療改革論争に著しく欠けている論点=長期間持続するコスト削減はどのようにして達成できるか、を検討した。
3人は、ビジネス界が過去20年にわたり学んできた競争原理の中にその答えを見いだした。どの産業でも、根本的な原理は同じである。企業は競争によって、顧客に対してより多くの「価値」を提供しなければならない。たえず品質を向上させ、コスト削減を推進するのはイノベーションである。医療分野のイノベーションを持続させるインセンティブがなければ、短期的なコスト削減ではすぐに押しつぶされてしまう。いっそう容易に医療機関を利用できるようにしたいという国民の欲求や、高齢者層の健康ニーズの増大、アメリカ国民は最高の治療以外は受け入れを好まないことがその理由である。
多くの医療改革論争の底には、テクノロジーは敵であるといった見当はずれの前提がある。テクノロジーが医療コストを押し上げるという前提に立ち、改革推進者はイノベーションの中心にある重要な点を見過ごしている。さらに悪いことに、イノベーションのペースを遅らせようとまでしている。
実際にはイノベーションこそ、激しい競争によって拍車をかけられ、医療改革を成功に導く鍵であると3人の論者は主張する。
アメリカのヘルスケアを救う、持続する治療法には、4つの要素が含まれなければならない。生産的な競争に拍車をかけるインセンティブの修正、経済効率を確保するための国民皆保険、意義のある選択を可能にするための関連情報の提供、そしてダイナミックな改善を保証する厳しいイノベーションの4つである。
11人の専門家に登場してもらい、アメリカの医療制度の現状をつぶさに検討し、とるべき改革案に対する意見を述べてもらった。また、ティスバーグ、ポーター、そしてブラウンにはそれに対する短いコメントをお願いした。
I. スティーヴン・ウダヴァーヘライイ
米国プルデンシャル保険会社メディカル・サービス担当バイス・プレジデント
プルデンシャル医療研究センターエグゼクティブ・バイス・プレジデント
ペンシルバニア州フィラデルフィア
エリザベス・ティスバーグ、マイケル・ポーター、グレゴリー・ブラウンの論じるとおり、現在我々が抱える医療コスト抑制の難しさは、アメリカの医療界がコスト・イノベーションを生み出せないことによるものである。しかも限られた資源の中でコスト削減と品質向上を成功させようとすれば、コスト・イノベーションは不可欠である。ところが3人の論者は、複雑に入り組んだ論文の中である重大な問題点を強調しそこねており、触れられていない問題点もあった。
支払い機関は保険請求があった場合、できるかぎり支払いをしないですませようとするという主張は、単純に過ぎる図式だろう。論者たちの指摘どおり、米国プルデンシャル保険会社では、品質プログラム研究によって、インセンティブがあればコスト削減と品質向上を同時に達成できることを示してきた。これはわが社に限られたことではない。健康維持組織(health maintenance organization:HMO)では従来の出来高払い(fee-for-service)のプランよりも、総合的かつ予防的ケアに対する保険の支払いのほうが多いのだ。一部のHMOでは、メディケイドに加入している妊婦に対しても支払いを行っている。HMOの経営者はHMOが個々の健康問題を抱えた個人より、対象となる人口全体の健康に責任があるという理解の仕方をしている。もし我々が医療制度問題の解決を望むなら、そうした次元で考えることからスタートしなければならない。
新しい医療テクノロジーの利用には、こうしたアプローチこそ必要なのである。医療分野の技術革新、とりわけコスト削減を可能にするイノベーションのペースは減速してはならない。その点で論者たちの意見は正しい。



