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企業間のコラボレーション(協働活動)は、従来の二企業間提携(ジョイント・ベンチャーやマーケティング上の連携など)を越えて広がりつつある。今日、多くの企業がグループを形成し、共通の目的を実現させようとしている。必然的に、新しい競争の形態、すなわちグループ間競争が世界市場に浸透しつつある。
それをネットワークと呼ぼうが、クラスター、企業集団(コンステレーション)、バーチャル・コーポレーションと呼ぼうが、グループ内の各企業は常に、より大きな包括的な関係で結ばれている。どのグループにおいても各メンバー企業の企業規模や理念は異なっているが、グループ内でのそれぞれの役割を忠実に果たしている。さらにネットワーク、あるいはグループの中で、企業同士が様々なアライアンス(ジョイント・ベンチャーのような公式のものから緩やかな関係の共同事業のような非公式のものまで)を形成しているのである。
そのようなアライアンス・グループの典型例は、1987年から1991年にかけて、シリコン・バレーのスタートアップ企業であったミップス・コンピュータ(後にシリコン・グラフィックスに吸収合併)によるものである。同社は新型マイクロプロセッサーの技術を普及させるために、アライアンスの巨大なネットワークを形成した。ネットワークはトータルとしての生産量を最大化させ規模の経済(Scale of Economy)を追求することを目的として、他の産業でも見られるものである。例えばスイス航空が、デルタ航空、シンガポール航空、SASとつくり上げたアライアンスは、大西洋間とアジア――ヨーロッパ間の乗客数を増やし、航空機の購入とメンテナンスを共同で行うことを目的としたものである。自動車産業ではGMが、トヨタ、いすゞ、鈴木自動車、サーブといった協力企業とネットワークを形成し、フォードのネットワーク(日産、マツダ、起亜、ジャガー)と世界レベルで競争を繰り広げている。またマルチメディアの領域では、コンピュータ業界と通信業界が融合するに伴い、この2年間にアライアンス・グループが多数出現した。コンピュータ・メーカーは家電メーカーやケーブルテレビ、電信電話、エンターテインメントの各企業と、新しい製品やサービスを開発するために、合従連衡を進めている。
アライアンス・グループは未来をかいまみせるものだろうか、それとも一時のブームに過ぎないのだろうか。それは本当に、グループの各企業がより効果的に競争することを可能とするのだろうか。
それらに確証を持って答えるには、経験則を提示する実例はいまだ少なすぎる。しかしグループ主導の戦略を実行しているパイオニア企業の経験を通して、トップ・マネジメントがそのようなアライアンス・ネットワークの決断をし、形成し、推進する前に何を考えなければならないかを知ることはすでに可能である。結論から言えば、ネットワークはその構成メンバーに明らかにメリットを提供することになるが、それには隠れたコストが伴うことにも留意しなければならない。
グループ主導型競争の拡大
アライアンス・ネットワークの概念はどのような背景から生まれたのだろうか。一つには、世界経済の変化の影響が挙げられる。1950年代から1960年代にかけて、米国企業は技術、マーケティング、大型組織の管理手法のどれにおいても、ほとんどチャレンジを怠ってきていた。そして1980年代から1990年代においては、世界中の企業が米国企業にキャッチアップするようになる。特に新規参入企業が、新しい技術の潮流にうまく乗ったコンピュータ業界や、市場のニーズにより柔軟に対応した成熟産業(自動車業界など)における変化はすさまじいものがあった。結果として米国企業は、社外の重要な技術開発と協調し、それを取り込むためには、海を越えた同胞との関係を重視せざるをえなくなったのである。
アライアンス・グループの戦略が有効になりつつあるもう一つの理由としては、昨今の製品やサービスが、その設計や生産、流通において複雑性を増していることが挙げられる。極めて特殊化した技術に立脚する部品を持たない製品は、今日存在しないといっても過言ではない。サービスにしても、非常に高度な技術なしには考えられない。つまり今日、ビジネスは、非常にスペシャライズされた技術や特殊な市場知識を持つ人材によるところの部材、マーケティング、流通なしには、存在し得なくなっているのである。これらの特殊経営資産を見いだし一つの屋根の下に拘束させておくことは、ほとんど不可能といっていいだろう。そしてまた、それは好ましい選択でもない。スペシャリティと規模における最大のメリットはシステムではなく部品レベルで達成されるようになっており、システム・レベルにおける相互依存関係を維持しつつ、部品レベルにフォーカスしたほうが、企業にとっては得策になっているのである。
競争環境のこのような変化に呼応して、各企業は単独あるいは従来の二企業間提携では実現不可能な競争優位確立のために、アライアンス・ネットワークの構築を始めている。ネットワークは次の3つのような環境変化のために、優位性を発揮するようになっている。
まず第1に、技術標準をめぐる攻防が激化しており、それに対するにはネットワークが不可欠になっていることである。成長途上の産業においては、様々な技術が市場シェアを求めてしのぎを削っている。この戦いの成否は、いかに多くの企業にその技術を採用させるかにかかっている。アライアンス・ネットワークは、企業が自社の技術をプロモートし、他社がその技術の採用を決定するだけのシェアを確立するのに有効である。そしてそのためには、多くの〝スポンサー〟が自らのグループに参画するようにさせなければならない。彼らの技術を採用したマシンが売れれば売れるほど、その技術を使ったソフトが増え、それがさらにマシンの販売に寄与するという、それは雪だるま式に増大していくのである。
第2に、世界規模での事業展開の必要性が高まるにつれ、アライアンス・ネットワークの重要性も増すことになったということである。様々な市場のローカル・カンパニーと関係を結ぶことは、供給量を増やし単価を下げる効果があると同時に、様々な国のスキルや資産にアクセスすることを可能とする。完全子会社をネットワーク化する方法もありうるが、規制による問題が発生したり急速な成長には不向きであるために、一般的には試みられない。航空業界のアライアンス・グループを例にとって考えてみよう。1980年代、1990年代の米国における規制緩和、ハブ/スポーク型システムの台頭、EC統合により、この業界での規模と事業領域の重要性が高まった。そして多くの国々にオペレーションを拡張することができない企業は、収益を確保することができなくなった。しかも、大規模な国内路線を持つ企業が、国際長距離路線で顧客を増やすことができるようにもなった。スイス航空のような零細航空会社にとっては、他の企業と連携する以外に策はなかったのである。



