国際競争の激化、製品開発の迅速化、フレキシブル生産システムの進展などによって、アパレル、玩具から電動工具、コンピュータに至るまで、かつてない量と種類の製品が市場で競争を繰り広げている。こうした状況は消費者にとって利益となる反面、メーカーや小売業が商品の売れ行きを予測し、生産・発注の計画を立てることをいっそう難しくしている。

 結果として予測の精度が低くなり、それによるコストが増大している。メーカーや小売店が、赤字覚悟の値引きで売らざるを得ないような商品が生じる一方で、他の商品は品切れのため、販売機会を失ってしまう。アパレル業界など需要変動が激しい業種においては、こうした品切れや値引き(マークダウン)によるコストが製造コスト全体をも上回るということが現実に起こっているのである(1)。

 予測精度の低下という問題に対応すべく、多くのマネジャーが様々な生産計画システムに取り組んだ。しかし、クイック・レスポンス(Quick Response)や、ジャスト・イン・タイム(Just-In-Time:「カンバン」)・システム、MRP(Materials Requirements Planning)などの方法は全く役に立たない。

 例えば、MRPのような方法では、当初の予測や計画が正しくないとなれば、メーカーはコンピュータに打ち込まれた生産計画をただちに変更することが可能だ。しかし新たに生産計画を立て直したとしても、原材料の供給体制が古い計画に基づいてでき上がってしまっていたのではどうしようもない。

 同様にクイック・レスポンスやジャスト・イン・タイムも大きな問題の一部に対応するにすぎない。メーカーの中には需要にダイレクトに対応できるよう生産工程を迅速化し、予測の必要を事実上なくしてしまおうと考える向きもあるかもしれない。しかし、ほとんどの業種では、需要に波がある製品の売上げは季節的に集中する傾向がある。したがって実需に応じて製品を生産しようとすれば、不必要に大きな生産能力を持たねばならない。迅速機敏な対応ができない業者に主要な部品を依存しているような場合には、クイック・レスポンスやジャスト・イン・タイムを使うことができないこともある。例えば、デル・コンピュータでは顧客の注文に対応し、コンピュータを迅速に組み立てられるようになったものの、部品メーカーのリード・タイムが長いため、その成果が生かされなかった。

 需要予測、生産計画、そして製造工程すべてについての新しいアプローチ、「アキュレート・レスポンス」(accurate response)を進めると、メーカー、小売業ともに、予測エラーによるコストを大幅に軽減できる。予測の精度を高め、同時に不正確な予測によるダメージを最低限に抑えるように企業の計画プロセスを改革できると筆者たちは考えている。アキュレート・レスポンスはこれら2つを可能にするのだ。アキュレート・レスポンスを実行するには、的確に予測できるものとできないものを明確に区別し、原材料供給のプロセスを、迅速かつ柔軟なものとすることが必要である。そうすることによってマネジャーは、シーズン初めの売れ行きなど、市場のシグナルが得られるまで予測が立てにくい商品についての意思決定を、先送りできるようになる。

 この方法には、他の予測・計画システムには大なり小なり欠けている2つの基本的要素が織り込まれている。

 第1に、この方法では機会損失が考慮されている。予測にエラーがあれば過少在庫あるいは過剰在庫に陥る。アキュレート・レスポンスは品切れやマークダウン1回当たりのコストを測定し、計画の過程にそれを組み込んでいく。生産に気を取られてしまうと、こうしたコストはおろか、逸した販売機会の数すら把握しなくなる企業がほとんどだ。

 第2に、アキュレート・レスポンスでは需要予測が比較的容易な製品と、困難な製品とが区別される。こうした区別は過去のデータと専門家の判断を交えてなされる。

 これら2つの要素を織り込むことで、供給ネットワークの体制、仕掛品の製造・配送計画、輸送、倉庫の数と配置など、原材料や商品の供給過程での重要事項すべての再検討や改善を支援するばかりか、製品のデザインの再検討・改善にも活用できる。需要予測が立てやすい製品と、そうではない製品を区別できれば、それぞれに対し、異なった生産アプローチをとることが可能となる。比較的予測のしやすい部類の商品はかなり前倒しして生産し、販売時期に近い時点での生産能力は、予測の困難な商品のために少しでも多く温存するようにする。こうした戦略をとれば、需要予測の困難な商品の発売前の生産は抑え、その他の商品は立ち上がりの販売動向を見極めたうえで、どの商品をもっと生産すべきか決定することができる。