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1991年、アイス・ティが歌うラップ・ソングの歌詞にショックを受けた警察官組合は、機関投資家に対して、発売元であるタイム・ワーナーの取締役選任議案に反対投票するように働きかけた。
現在、機関投資家は、アメリカの上場企業の議決権株式の過半数を所有しており、それら企業の経営に対する影響力を持っている。
その影響力のゆえに、機関投資家は、アメリカ産業の経済的な競争力やさまざまな社会的運動のために活動的な株主(activist shareholder)になることを迫られつつある。
と同時に機関投資家は、コーポレート・ガヴァナンスのプロセスに介入することに非難を浴びてきた。
例えば、コンテル社の会長兼CEOであったチャールズ・ウォールステッターが公的年金基金の活動を批判している(囲み「年金基金が経営に口をはさむことにはなはだ疑問である」参照)。
年金基金が経営に口をはさむことにはなはだ疑問である
コンテル社元CEO
チャールズ・ウォールステッター
この数年間、アメリカの株式市場では、その機能が危険な方向に変化している。
「株式市場の将来はどうなるのか」という問題について、大々的に宣伝することもなく、公に討論されることもないまま、州や市、そして規模こそ小さいが、民間の年金基金は、アメリカの金融制度の役割を著しく歪めてしまった。
もしこの傾向が続いていくならば、さらにやっかいなことが起こるだろう。つまり、企業国家であるアメリカが、官僚支配の方向へとまっしぐらに進むことになるのだ。
州、市、民間の年金基金は、アメリカ企業の株式を大量に購入した。これらの機関投資家は、5%から10%の割合で企業の株式を支配しているが、その投資が順調にいかないとき、彼らが選ぶことのできるオプションに何があるだろうか。
歴史的に見ると、会社が期待どおりの業績を上げられなかった場合、株主は保有の株式を売却し、他の会社に投資を振り向ける。
しかし、現在では簡単にはそうできない。一つの基金が、ある会社の株式を数百万株も所有していると、再投資の対象として、その株式が欲しいと思ってもすぐさま購入できるわけではないのだ。
したがって、近年、機関投資家は、投資収益やその会社の業績を改善させるために、(再投資の代わりに)株主として経営方針に影響力を行使することが重要だと考えている。
このように、機関投資家が企業経営に口をはさむことが増えてきている。おかげで、眠っていた経営者は目覚めたかもしれない。
しかし、歴史的には、こうした基金の理事たちによってその種の権力が行使されることが、当然のことだとは認められていないという問題がある。
大企業を経営した経験を持った職員がいる州や年金基金が、はたして一つでも存在するのだろうか。
もし、年金基金の職員たちが、巨大企業の経営者として必要な技能を備えていたとすれば、彼らはどんなに高額であろうと、今の給料では満足しないだろう。
その代わり、その非凡な洞察力によってアメリカ産業界を正しい方向に導いていくつもりでいるのだろうか。
しかし、こうした年金基金の投資担当者は、実際に株式を所有しておらず、彼らは株主という受益者のための受託者にすぎない。だから、彼らは株主に相談せずに行動できる。
現在、SECは機関投資家たちと歩調を合わせるような行動に出ている。そしてSECは、制限はあるが、彼らに、株主を団結させたり、経営陣を更迭したりできる特権を与えている。
しかし逆に、同じ業種の企業同士が、お互いに相談し、一丸となって行動することを決めたとすれば、告訴されることになろう。要するに、アメリカには『フォーチュン』誌の上位500社に対して支配力を持った人々のグループは存在する。
しかし、彼らには、優れた経営手腕や、取締役を選出した経験、ましてや研究開発費に対する信用できる判断力などはいずれも備わってはいないのだ。あるのは、他人の資金管理をした経験だけである。
このことが、企業国家アメリカの構造と機能に与えるダメージは、目にこそ見えないが非常に大きいだろう。
いったい、どこのだれが、カリフォルニア州やニューヨーク州やニュージャージー州の、あるいはその他の政府機関の職員に『フォーチュン』誌の上位500社を支配させることを真剣に望むだろうか。
だから私は、年金基金等によるコーポレート・ガヴァナンスに疑問を抱くのである。
コーポレート・ガヴァナンスに識者10人からの提言
(HBR 1993年1-2月号より、DHB 1993年5月号より)
The Fight for Good Governance
© 1993 the President and Fellows of Harvard College.
ウォールステッターの主張は誇大であるにしても、いったい機関投資家はどのように行動すべきなのだろうか。機関投資家は、どのような要素に重点を置いて活動的な株主となるべきなのだろうか。
さらに機関投資家は、どのような場合に経営者に賛成の票を投じ、どのような場合に経営者と対立する利害を擁るために戦うべきなのか。
そして(おそらくこれが最も重要なことであろうが)、企業経営者は、機関投資家の意思決定の仕方について何を知るべきなのか。
しかし、ほとんどの機関投資家は、活動的な株主になっていないし、企業経営上の諸問題に関わることを望んでもいない。



