際立ったサービス企業の経営トップたちは、1970年代から1980年代の経営で見られた常套句、つまり利益目標の設定や市場シェアへの傾倒といったことに時間を費やしたりはしない。そのかわりに、新しいサービス経済においては、市場に日常的に接するフロントラインの担当者と顧客を経営の要とすべきことを彼らは理解している。成功したサービス企業の経営者たちは、こうした新しいサービス・パラダイムにおいて収益性を高めると思われる要因に関心を寄せている。すなわち、それは人への投資、フロントラインの担当者をサポートする技術、新しい採用・訓練の方法、そして全階層の社員に対する実績ベースの報酬である。また彼らは、アメリカの会社ではめったに耳にしないような言葉でリーダーシップのビジョンを表明している。すなわち、それは組織に備わるべき「高潔な精神」と「裏方仕事の大切さ」である。

 バンク・ワン、インテュート、サウスウエスト航空、サービス・マスター、USAA、タコ・ベル、MCIをはじめとした多くの企業が、社員と顧客を最優先に考えれば、経営のやり方や評価の仕方に抜本的転換が求められることを知っている。新しいサービス経済ではいくつかの革新的な測定技法が必要とされる。

 これらの測定技法は社員の満足とロイヤリティ、そして生産性が、製品とサービスの価値に与える影響を測定するものであり、その結果、経営者が顧客の満足とロイヤリティを確立し、それが収益性と成長性に及ぼす効果を評価できるようにする。実際、一人の得意客から得られる生涯価値は、とくに顧客維持や関連製品の反復購買から得られる利益に新規顧客の紹介が加わると、その額は計り知れないほど莫大なものとなる。

 例えば、ピザの得意客からは8000ドル、キャデラックの所有者からは33万2000ドル、そして営業用航空機の購買担当者からは実に数十億ドルもの生涯収益が獲得できるのである。

 成功したサービス企業の分析をもとに開発されたサービス・プロフィット・チェーンでは、「漠然としたもの」を「数値化」している。これによって経営者がサービスの開発と満足の向上を目標として新規投資を行い、市場リーダーとなるサービス企業と平凡な競合相手との格差を広げるような、最大の競争力を確立することができるのである。

サービス・プロフィット・チェーン

 サービス・プロフィット・チェーンとは、収益性、顧客のロイヤリティ、社員の満足、従業員のロイヤリティ、そして生産性のそれぞれを関係づけるものである。これは次に述べるような(命題として見なされるべき)いくつかのつながりによって成り立っている。

 企業の利益と成長は、主として顧客のロイヤリティが原動力となって推進される。顧客のロイヤリティとは、顧客満足がもたらす直接的な結果である。顧客満足は、顧客に提供されたサービスの価値に強く影響される。サービスの価値は、満足感を持ち、会社へのロイヤリティが高い、有能な社員によって創造される。そして、社員満足は、主として高い品質を備えた内部支援サービスと顧客サービスの提供を実現させるための諸方策によってもたらされる(図1「サービス・プロフィット・チェーンの流れ」を参照)。

 サービス・プロフィット・チェーンは、特殊なリーダーシップによって定義することもできる。模範的なサービス企業の最高経営責任者たちは、社員と顧客の大切さを強調している。彼らが顧客と社員に向ける熱いまなざしは、決して年次経営会議用のお題目だけのスローガンに終わるものではない。例えば、サウスウエスト航空の最高経営責任者であるハーバート・ケラハー氏は、飛行機の機内、滑走路、そしてターミナルで社員や顧客と自ら応対している。適正な態度を持った社員を雇うことが極めて重要なことなので、採用に際しては「高潔な精神」が必要であるとケラハー氏は信じている。彼はまた「簡単に数量化できる要因だけで物事を見ている者は、ビジネスの真髄である人間というものを見落としている」と信じている。

 サービス・マスター社の社長であるウイリアム・ポラード氏は、彼が呼ぶところの「奉仕者の心」を持って「教え学ぶ」経営者の重要性を強調し続けている。