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経済が日一日と、サービスおよびテクノロジー中心になるにつれて、セールス活動の中身が変化するだろう。サービスがますます幅をきかし、テクノロジーが複雑さを増すために、買い手と売り手の関係はますます長期にわたり、厄介なものにならざるをえない。だから、売り手の努力の中心は、単に販売契約を結ぶといったことから、購入後に買い手を満足させるということに移行する。買い手を購入後引き続いて満足させるには、売り手は買い手との間に、建設的な交流関係を維持しなければならない。この努力のなかには、買い手の不満および今後発生する買い手のニーズを見落とさずに対応することが含まれる。反復注文は、この関係をいちばんうまく育てた売り手にくる、というのが著者の意見である。
いうまでもなく、すべての製品すべてのサービスに、みんな同程度の関係育成の努力をする必要はない。サービスを必要とする期間が長く、また、売られる製品の複雑さが増すほど、売り手は買い手との関係に多くの注意を払わなければならない。ところが、いくら適切な努力をしたとしても、思いつきでやったのではいけない。体系的に継続的にやらねばならないのである。このために、売り手は事態の変化に敏感になり、その対応に機敏でなければならない。著者は、こういった能力を企業のビジネス慣行のなかへ定着させる方法を提言する。
売り手と買い手の関係が、販売が成立した時点で終了することはほとんどない。販売の終わった後が、ますます両者の関係が強くなる。買い手が次回の取引相手を選ぶ場合に、この関係がモノをいう。このような事態は、特に売り手買い手間の交渉が長期間にわたって続くような、サービスや製品の取引によく見られるのである。例えば、経理サービス、コンサルティング、ゼネコン、軍事および宇宙航行用機器、資本財の場合などがそうだ。
販売の成立ということは、単に求婚行為が完了したというだけのことであって、その時点から結婚生活が始まるのである。結婚生活がうまくいくかどうかは、売り手が買い手との関係をどのように上手に工夫していくかによって決まる。結婚生活の中身のいかんによって、その後も長く豊かな縁【えにし】が続くか、それともゴタゴタが起こって、ついには離婚に追い込まれるかが決まるのである。場合によっては、離婚することもできないことがある。大規模の建築工事や据付工事プロジェクトが進行中のような場合である。離婚もできずに仕方なく夫婦関係を続けて、両者が苦悩しなければならないとしたら、売り手の評判を傷つけるだけである。
このようなトラブルを避けるには、取引の最初から顧客との間の関係をうまく管理する必要をよく認識しておかねばならない。それには売り手と買い手の関係について、しばしば忘れられてきた側面――時間要因に特別の注意が払われる必要がある。
需要供給の理論によると、経済システムは、時間のかかる人間交流とは無関係に動く――すなわち、供給と需要が遭遇するときに、人間性とは無関係の瞬間的な販売交渉によって、市場の形がすっきりと決まるのである。この理論は、製品の複雑さと相互依存性が強くなるにつれて、まったく正しいとはいえないばかりか、そのあやしさが増してきた。オートメ機械の買い手は、蚤の市にやってくる買い手のように、掘り出し物を見つけて家に持ち帰るようなことはしない。売り手の据付サービスも、応用援助も、部品の供給も、購入後の修理保全サービスも、さらには最新装置の導入による高性能化も期待するだけでなく、製品の性能を高め、長期間にわたって陳腐化しないように、また、自社の競争上の地位を下げないように、売り手のR&Dの助言も望んでいる。
長期にわたり取引が連続するような買い手、例えば、包装用品会社からカートンを、銀行から融資サービスを買う冷凍食品メーカーは、1回限りの取引をうまく結ぶというよりも、取引関係をうまく続けていくことに関心を集める。軍事用機器もますます複雑になっていくために、アメリカ国防省でさえも、その購入契約の大部分は100単位以下の量で発注する。そのために、取引の回数を増やさなければならなくなっている。
製品も大型になり、コンポーネントも大型になると購入サイクル(発注から購入完了までの期間)が長くなるために、売り手が配慮しなければならない買い手のニーズも変化してきた。大型購入契約の購入サイクルと、購入を完成させるのに必要な保証の仕方の変化について考えてみよう(表1)。このような状況の下での購入デシジョンというのは、一つの品目の購入デシジョン(恋の火遊びをする)ではなくて、不動の関係に参入するデシジョン(結婚する)なのである。だから、売り手になりたいと思う業者には、今までと違った目標および戦略が要求されるのである。
セリングだけでは、もはや役に立たない。図1で示したような、古いセリング体制と新しいセリング体制の間の驚くべき差異について考えてみよう。セリングの場合、売り手は買い手から一定の距離を置いていて、セールス部門を使い、遠隔操作で買い手に製品を買わせる。販売を成立させるものは、製品の品質よりも、セールスマンの威信だから、セールスマンには毅然とした権威性(カリスマ性)が必要だという主張の根拠は、ここにある。




