だれもがグローバル化ということを口にするが、その本当の意味を理解している人はほとんどいない、とワールプール社の会長でCEOでもあるデヴィッド R. ホイットワム(51歳)は言う。ホイットワムによれば、相も変わらず古くからの同じテリトリーを死守しながら、顧客を十分に満足させられないビジネス方式をとっているマネジャーが多すぎるという。その結果、グローバル化を目指しながら、コストとクオリティを唯一の武器として、手にするマージンは減る一方の消耗戦から脱却できない企業が多い。

 ホイットワムが1987年にCEOになったとき、ワールプール社は、北米の家電市場で勝ち目のない戦いに苦戦していた。ホイットワムは1968年にワールプール社に入り、販売とマーケティング部門で昇進していくなかで、将来に向けた本物の成長を確実にするために必要な変革を行う決意をした。グローバル化のチャンスを捉えたいというホイットワムのビジョンによって、ワールプールは、1989年に、低迷していたN.V. フィリップスのヨーロッパの家電部門を10億ドルで買収した。これによって、ワールプールは世界の家電業界でナンバーワンの位置に躍り出たのである。

 ホイットワムは、コスト削減と営業改革によってフィリップスの問題を「解決」することも、あるいはできたかもしれない。だが彼はもっと野心的な道を採った。地域的に限られ、マージンに引きずられていた2つの会社を顧客中心の一つの会社に変身させ、両者の総合的な能力を利用して、世界の市場で業績の一大変革を実現できるようにしたのである。その結果、新しいワールプール社は世界の家電業界のペースメーカーとなって、その価格体系の推進役となったのである。

 ホイットワムは、この変身がまだ完成していないことを率直に認めている。ワールプールがこれまでに何を学び取り、いまなお学び取っているかを語ってもらうために、ミシガン州ベントン・ハーバーの同社本社で、ホイットワム会長にHBRのレジナ F. マルカ副編集長がインタビューを行った。

HBR:1987年頃は、ワールプール社は北米を中心に事業を進める会社でした。それが今日では、アメリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカに工場を備え、11カ国で製造を行い、タイ、ハンガリー、アルゼンチンなどさまざまな国を含む120以上の地域で製品を販売しています。企業がグローバルな競争上の優位を築くうえで、ワールプールが学んだ最も重要な教訓とは何でしょうか(以下、太字がHBR)。

 デヴィッド・ホイットワム(以下略):永続的な競争上の優位を獲得する唯一の方法は、自分の会社が世界中に持っている能力をてこにして、会社全体が、単なる部分の集合以上の力を発揮できるようにすることです。国際的な企業として、グローバル規模で販売をし、さまざまな国にグローバルなブランドや営業所を持っているというだけで、十分だと思ってはいけないのです。

 実際のところ、多国籍メーカーの大半は真の意味でのグローバル企業ではありません。彼らは私に言わせれば、「フラッグ・プランター」とでも呼ぶもので、各国に自社旗を掲げた営業所を持っているだけです。確かに彼らは世界各地で買収をしたり、ビジネスを確立しているかもしれませんが、それぞれの地域や国の営業所は自治形態組織として営業しています。今日のような時代にあっては、そのようなやり方でビジネスをしたのでは、長期的な競争上の優位を得ることは期待できません。

 私にとって、「競争上の優位」とは、自社製品を可能な限りの低コストで設計、製造、販売、サービスができるような最上のテクノロジーとプロセスを備えていることです。ワールプールのビジョンは、地域的なビジネスを可能な限り統合化しようというものです。その結果、ある地域に当社が持っている最も進んだ専門技術――冷凍技術であれ、財務報告システムであれ、販売戦略であれ――は、1つの地域だけ、あるいは1つの部門だけに限られるわけではなくなります。我々としては、当社が持っている最高の能力を利用して、それを世界中のワールプールの営業活動のてこにしたいと思っています。

 家電業界では、製品のサイズや消費者の好みの違いから、地域ごとの製造センターを備えることが必要です。しかし、例えば、冷蔵庫や洗濯機、オーブンの場合、その特徴、規模、機械配置は市場ごとに違うとしても、そこに関わるテクノロジーや製造工程は似通っています。言い換えれば、メーカーは、ヨーロッパ、アメリカ、ラテンアメリカ、アジアなど、それぞれの市場の特別なニーズに合った製品をつくる工場は必要だとしても、それら各地の工場が利用し得る最善の製品技術と製造工程を共有することは可能であり、望ましいことでもあるのです。

 例えば洗濯機の場合を考えてみましょう。洗濯の技術は、あくまでも洗濯の技術です。しかし、当社のドイツの製品は機能が豊富で、したがって用途が広いと考えられます。一方、イタリアの工場の製品はRPM(再販売価格維持)が低く、コストも安いのです。けれども、実際は製品の中身に大して違いがありません。ドイツの洗濯機もイタリアの洗濯機も、部品の数を減らすことによって標準化してもっと簡単にできるわけで、この点はどんな製品系列についても言えることです。それでも当社がフィリップスを買収した頃は、イタリアとドイツの工場でつくられた製品には、共通のねじ一つありませんでした。今日では製品の設計のやり直しをして、同じ基本ラインで幅広いモデルが製造できるようにしました。当社の新しい乾燥機の製造ラインはまさにこうした共通の土台を持っていて、他の製品についても同じような設計方法が採られるようになりました。