-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
路上のあちらこちらに廃品回収箱が置かれ、一般大衆の意識を高めるためにリサイクル・キャンペーンが盛んに行われているにもかかわらず、アメリカ合衆国中のリサイクル・プログラムは成功しているとはいえない。近代都市におけるリサイクル運動は1984年、ニュージャージーで施行されたリサイクル法を手始めに始まり、膨大な量の古新聞、空きビン、事務用紙、およびその他の廃棄物の回収に成功した。しかしこれらの廃品を原料として作られた製品の需要が消費者や企業の間でどれだけ伸びているかというと、リサイクルの経済学はまったく成り立っていない。マスコミや専門家に言わせれば、「リサイクルは、成功したがためにその犠牲となっている」のだそうである。
実のところ、リサイクルとは再生できるものを回収することだけをいうのではない。それは総合的な経済システムである。各地域社会の路上ゴミ回収プログラムは、リサイクルの完結すべき輪の始まりにすぎないとわかっている人はほとんどいない。現在、再生可能なものを回収し、加工するコストのほうが、それを商品に変えて産業界へ改めて販売する価格よりもはるかに大きい。消費者がリサイクルされた製品を買わなければ、路上に出したり事務所の白紙用ゴミ箱に入れたものの市場は、いつまでも低迷し続けるだろう。
しかし、この市場が不確定であるからこそ、企業はリサイクル製品の需要を確立して、競争力をつけることもできるのである。1990年代に素早く行動に出る企業は、新しい製品のニッチ市場を開拓し、製造技術を開発するだろう。先見の明のある企業はすでに利益の上がる突破口を見つけている。グリーン製品に対する消費者の需要は確かにあり、ラバーメイド、ムーア・ビジネス・フォームズ、インターナショナル・ペーパー、さらにそのほかにも多くの企業が適切な製品を提供して、市場占有率を目ざましく伸ばしている。これらの企業はまた、将来必ずもっと厳しい環境規制が行われることも予測していた。政府や地域社会の環境保護団体とやりあう代わりに、企業は公共団体やその他のビジネス団体と戦略的に手を組んでいくことも今では可能である。
公共機関の政策立案者らがリサイクル・プログラムがなぜうまくいかないのかと思いめぐらしている一方、大企業も中小企業も共に指導権を握るまたとないよい立場にいる。さらに重要なことは、それが企業の経済的利益に合致するという点である。アメリカ企業が地域社会のゴミ回収プログラムを開始したり、政府に代わって多くの地域社会や州全体を巻き込んだ政策を実施するというのは確かに賢明ではないだろう。しかし企業内の指導的立場にある人々は、リサイクル製品は割高で粗悪だという、現在横行しているリサイクル神話に挑戦すべきではないか。
アメリカ航空、ベル・アトランティック、コカ・コーラ等の会社の経営陣は、リサイクル製品の購入およびグリーン研究開発への投資を、全社的ビジネス戦略の一部にしてしまっている。廃品の量を減らし、利ざやを増やし、場合によっては、リサイクルの輪を実際に完結させている企業もある。
リサイクルが成功するかどうか、そもそも長期的に見たリサイクルの真の価値は、埋立地のスペースをどれくらい節約できたかではなく、リサイクルが経済的に成り立つかどうかにかかっている。リサイクル原料への需要を確立するためには、政府と企業、ともに自らの体質を改善するだけではなく、お互いの関係を見直す必要がある。特に両者が協力しなければ解決できない経済問題に直面している今こそその時である。
需要の確立:リサイクル市場の問題
リサイクルにおける現在の経済的危機の原因としてもっともよく挙げられるのは需給の問題である。リサイクルセンターやゴミ運搬業者がペットボトル、新聞、電話帳をありもしない市場を求めて保管しておき、最終的に埋立地に投げ捨てるということはよくマスコミが報道している。リサイクルセンターでこれらの廃品が見苦しい「ガラクタ」の山になり、公共衛生に害を及ぼすとして問題視されるようになるまで保管しているというのである。
現実にそういう場合もある。しかし再生可能なものがリサイクルセンターにそのまま放置されることが多い本当の理由は、商売のうまい商品ブローカーと同じように、リサイクル業者が「将来の値上がりに賭けている」からである。再生できる原料を山と保管して、リサイクル業者は価格が上がるのを待っている。それで、回収、運搬、加工、包装、保管の費用をまかない、さらにそれに妥当な利益を上乗せしたいと期待しているのである(コラム「路上に出されたゴミの高い加工コスト」を参照)。
路上に出されたゴミの高い加工コスト
確かに過去8年間にリサイクル原料の供給率は劇的な伸びを見せた。しかし、原料過剰が現在の市場価格の低迷の唯一の理由ではない。リサイクル製品は多くの新しい原料からできた製品に比べて、販売の予測が難しく、汚染されている場合が多い。そのうえ過去50年間アメリカの業界は、新しい原料の品質を高め、汚染を最小限にとどめる技術を開発してきた。特に製紙業界は新しい原料の精製プロセスを絶えず改良してきた。その結果が、高品質、低コストの新しい原料であった。
現代のリサイクル運動の到来で、路上やオフィスのリサイクル・プログラムで回収された古紙でできた原料が新たに大量に生み出されたのは当然である。初めて消費者が古紙を求めたときには、メーカーは古い、時代遅れの工場を手直しして、新しい原料用に既存のプロセスを間に合わせにつくった。製紙業界の主要メーカーにとっては、高品質のリサイクル原料を一定量購入してくれる買い手がいるかどうかの保証がなかったので、リサイクル原料用の新しい工場やプロセスに投資するのは意味のないことだったからである。しかしその結果、特に1970年代の後半から1980年代の初めにかけて、競争相手の新しい原料より高価で、品質も劣るリサイクル紙が出回った。
そうするうちに、連邦政府と地方政府の援助を得て、スクラップ業界やリサイクル業界が、原料汚染の問題を解決するために、中間加工センターや原料回収施設(MRFs)を設立した。これらの施設は資本と労働力が集中している場合が多く、原料を「よりきれいな」商品にする手動および自動システムも備えていた。理論的には最終製品は、かつてはほとんどが大規模なスクラップ業者の独壇場であった既存の産業プロセスに投入できる、比較的に高品質の原料となるはずだった。
しかし、種々の理由で、この加工段階のコストは政策決定者が最初に予想していたよりもはるかに高くなった。全国固体廃棄物管理協会の調査によると、路上のリサイクル品の加工コストは、およそトン当たり50ドルである。新聞のコストはトン当たり20~55ドルである。プラスチックのミルクボトルやソーダボトルはトン当たり65~300ドルの範囲である。
埋め立て手数料は、全国平均でトン当たり最低30ドル以下なので、リサイクルは明らかにアメリカではコストのかかるプロジェクトである。リサイクル商品の平均コストを計算すると、回収、輸送、加工コストの合計が、トン当たり150~200ドルである。ゴミの回収、輸送、処理、および処分の平均コストがトン当たり100~125ドルである。下記の「MRF加工コストと原料価格」は加工コストと市場価格の関係を示している。一般にアルミだけがリサイクル・プログラムで加工して明らかに利益の上がる商品である。
MRFsで加工された原料のほとんどは、何か別の方法で加工コストをカバーしない限り、加工事業としては成り立たないような価格であるというのが単純明解な事実である。この問題を解決するために、MRFの経営者は、リサイクル品を実際に確実に産業プロセスや製造プロセスに戻すというサービスに対して、地方自治体やゴミ回収運搬業者に支払いを請求すべきである。他に選択肢はあるか? 経営者としては、利益の上がらないリサイクルサービスを中止するしかない。
すべてのリサイクル商品は過去数年間、産業界では買い手市場となっている。リサイクル原料、つまり供給原料のエンドユーザーはだれと取引するかを選択でき、必要とする原料の価格は絶対値上がりしないという確信が持てる。リサイクル商品は多くの場合、新しい原料でできた商品と競争もしなければならない。例えば、過去2年間で高密度ポリエチレン(HDPE)業界では新しい樹脂が供給過剰となった(1)。市場には「きれいな」原料があふれ返り、路上のリサイクル・プログラムによって回収されたこの種のプラスチック原料の価格は急落した。




