企業変革は、極めて特定個人の力に依存する企てである。

 いかなる組織においても、そこに変革を起こすためには、所属する個々人が自ら考え、感じ、あるいは従来とは異なる新しい何かを行う必要がある。各社員は自社の戦略をよく理解し、適切に行動することが必要となる。何千人もの社員を抱える大企業でさえ、経営トップは彼ら一人ひとりの同意を得ていかなければならない。それは2万5000人の人間を、事前に決められた場所に同時に集合させるようなものである。

 企業変革という企ては、すべての企業の関心事であり、困難でフラストレーションのたまる仕事であるのも無理からぬことだ。

 ほとんどの経営陣にとっての悩みは、変革を管理することが、自分たちが手掛けた経験のある他のどんな経営課題とも異なっていることである。

 ある大企業のCOO(Chief Operating Officer)は、彼曰く、「自分の仕事はいかに複雑であろうと、従来業務上の問題に対処することだ。そして、自分にはそれを解決するために必要なすべての能力が備わっている」

 しかし、変革を管理するとなると、他の業務上の課題解決に使っているモデルや手法は役に立たない。

「まるで会社という病人が同時進行で5種類の治療を受けるようなものだ」と先述の彼は語ってくれた。

「ある者は歯の神経を抜くことを担当し、ある者は足の骨折の治療をし、また別の者が肩の脱臼を治したり、胆石を摘出したりしているようだ。それぞれの手術が成功しても、患者はそのショックで死んでしまうかもしれない」

 実は、これは単純な問題である。我々は通常、機械的なモデルを使っている。このモデルをまず肉体労働に適用し、そして、今日の知的集団向けの新しい精神的なモデルと一緒に使用する。我々は変革をいくつかの小さな部分に分解し、それぞれの部分を管理しようとしている。これはフレデリック・ウィンスロー・テーラーの科学的管理の遺産である。

 しかし、変革における課題は、そのダイナミックな活動をいかに管理するかであり、部分を管理することではない。