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プライベートエクイティファームは
もはや「乗っ取り屋」ではない
プライベートエクイティ(PE)ファームは「乗っ取り屋」として描かれることが多い。先を争って企業を買収しては、コスト削減と金融工学によって経営指標を手早く膨らませ、転売して巨利を稼いでは次の対象へと向かう投資家というイメージだ。しかし、このような見方は時代遅れである。
PE業界が古くから使ってきた手法のいくつかは、ここ数十年であまりにも広く普及したため、もはやかつてのように並外れたリターンを保証しなくなってしまった。たとえば、資産のカーブアウト(事業部門や子会社を切り離して売却する)やセール・アンド・リースバック(所有する資産を売却し、それを購入した相手からリースして使用を続ける)といった手法だ。
それゆえ、現在大きな成功を収めているPEファームの大半は、剰余価値を生み出すために極めてわかりやすい方法を用いている。すなわち、「よりよい事業を、より早く育てる」手法を学んだのである。
複数の学術研究が示すように、PEファームに買収された企業は競合を上回る業績を挙げている。これは、財務面のリターンで競合を上回っているだけでなく、業務運営面においても劇的な改善を実現しているのだ。PEファームによる買収企業は、平均で買収から2年で生産性が8~12%向上している。一般に上場企業の生産性向上率は2~4%とされるが、それをはるかに上回るペースだ。
この点について、世間一般では次のように考えられてきた。PEファームが投資する企業は、その所有構造やガバナンス、報酬体系などが一般的な企業とは異なる独特の事業環境にあるため、彼らの手法を一般的な事業環境にある企業に持ち込んでもうまくいかないだろうという見方である。
だが、筆者らの研究や経験から、この考え方は間違っていると思われる。むしろ、あらゆる業界のCEOと経営チームは PEファームのやり方を理解しようと努めるべきであり、自社にとって適切なものがあれば、彼らの手法を取り入れるべきだと筆者らは考えている。
筆者らはみずからの研究だけでなく、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)とマッキンゼー・アンド・カンパニーによる「PEファーム投資先企業のCEOのためのエクセレントリーダーシッププログラム」に参加した120人を超えるCEOと協働した経験からも、このような手法が優れた業績につながる実態を目にしてきた。多数のPEファームが、規模も業種もばらばらな何百ものポートフォリオ企業にそうした手法を適用してきた結果、さまざまなタイプのビジネスに有効であることが証明されたのだ。
本稿では、その中でもとりわけ効果的な手法を6つ紹介する。
1. 自社の「フルポテンシャル」を定期的に精査する
PEファームは対象となる企業を買収する前に、なぜその会社を買うのかという「投資仮説」(投資の理由や見通しを詳細に文章化したもの)を厳格に定め、業績予想を数字ではっきりと示す。そのプロセスの一環として、「モメンタムケース」(大きな変革やディスラプションがない場合の会社の将来像)と「フルポテンシャルケース」(その会社が大胆な行動に踏みきった場合の会社の将来像)の概略を示した財務モデルを作成する。



