-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
「学習する組織」の理論は進化の途上にある
名和:本日はありがとうございます。博士のことは『学習する組織[注1]』の初版が発行された1990年以来、よく存じ上げています。ちょうど私がハーバード・ビジネス・スクール(HBS)を修了した年でもあり、思い出に残っています。
当時、この書籍を読んで大きな衝撃を受けました。私はHBSでマイケル・ポーター教授に師事していましたが、彼の唱える競争戦略論には賛成できない点もありました。そんな時に博士の書籍に出会い、嬉しく思ったものです。
さて、『学習する組織』が出版されて35年になります。本書が現在の世界にどのような影響を与えてきたとお考えですか。
センゲ:私の一連の研究は、進化し続けています。『学習する組織』は単に理論を羅列したものではありません。1980年頃、マサチューセッツ工科大学(MIT)でCEOの会合を主催しており、そこで生み出されたツールが多くの組織に活用されていきました。『学習する組織』で提唱している5つのディシプリンの枠組みはまだありませんでしたが、そのうちの2つである「システム思考」「メンタルモデル」の概念はすでにあり、「自己マスタリー」や「共有ビジョン」も意識していました。
したがって、本書で紹介した理論はどれも非常に実践的で、内容も進化しています。実社会における組織の運営形式は常に変化し続けますから、凝り固まった考え方を持ち続ける余裕などありません。
その後、私の関心は少しずつ移り変わり、持続可能性により重きを置くようになりました。そして組織化したのがSoL(組織学習協会)のサステナビリティ・コンソーシアムです。「持続可能な開発のための世界経済人会議」が設立されたばかりで、ビジネス界では急進的な少数派でしたが、不健全な世界で健全なビジネスなどできない、企業も社会や環境の問題に真剣に取り組むべきだと考えていたのです。多くの企業は、いかに収益を挙げるかで頭がいっぱいでしたが、異なる考えを持つ少数派の企業も存在しました。
1997年、SoL設立の主要メンバーで、ロイヤル・ダッチ・シェル(現シェル)に勤めていたアリー・デ・グースが素晴らしい書籍を出版しました。彼はブラジルやアフリカ地域を統括する重役を務め、引退前はグループプランニング室長という職に就いていました。
シェルのプランニングの概念は、当時では画期的でした。1960年代頃まで石油産業は将来の見通しが立ちやすかったものの、70年代になり予測不可能な状況に突入します。そこでシェルは考えました。組織的な機能を深化させるプランニングの核は「学習」だと。現にアリーは1988年、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)に、「組織の学習能力向上のための計画策定[注2]」という論文を発表し、大きな反響を呼びました。そこに記された発想は、書籍『企業生命力[注3]』につながっています。



