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生成AIの急速な発達や人的資本情報開示の義務化など、経営環境が目まぐるしく変化し、企業人事を取り巻く環境も激変している。こうした中で注目を集めているのが、AIを活用して人材戦略を最適化する「タレントインテリジェンス」という新たなHRテクノロジーだ。早稲田大学教授の大湾秀雄氏に、その可能性と日本企業が直面する課題について聞いた。
経営の先行きが不確実になる中、日本の人事が抱える課題とは
経営を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、人事に関する課題も複雑さを増している。
「特にここ数年、生成AIの急速な発達によって製品・サービス市場におけるビジネスモデルの将来像を描きにくくなったことが、経営の先行きをますます不確実にしています。AIのさらなる進化や普及によって、3年後、5年後にどんな人材が求められるようになるのかが見えにくくなっており、人材配置や育成計画づくりの難度が極端に上がっているのです」
そう語るのは、人事経済学や組織経済学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院・政治経済学部教授の大湾秀雄氏である。
一方で、人的資本情報開示規制の下、企業には、理想の人的資本と足元のそれとのギャップを明らかにし、どう埋めていくのかという道筋を明確に示すことが求められるようになった。「そうした資本市場からの圧力も、企業人事の難度をますます高める要因になっています」と大湾氏は指摘する。
さらに、「今日では、社員がみずからの能力を磨き、将来を切り開くキャリア自律性が志向されるようになっており、人事主導で人材配置や教育を行ってきた戦後以来の人事制度そのものが転換期を迎えています」(大湾氏)。
こうした環境変化に対応すべく、発展してきたのがHRテクノロジー(以下、HRテック)である。社内の人材情報を可視化して管理するタレントマネジメントシステムは、その代表格だろう。そしていま、新たに注目を集めているのが、「タレントインテリジェンス」という手法だ。
タレントインテリジェンスがいま注目される理由
タレントインテリジェンスは、2024年頃から米国で使われるようになった、タレントマネジメントシステムを進化させた人事プラットフォームである。特徴は、AIが膨大な人材データを収集・整理するだけでなく、その内容を詳細に分析し、人事担当者と人材の双方に、「ふさわしいポジション」や「学ぶべきスキル」をレコメンドしてくれる点にある。
従来のタレントマネジメントシステムとはいったいどこが違うのだろうか。大湾氏は次のように説明する。
「一番大きな違いは、社内の人材データだけでなく、政府統計やSNS上の発信、ジョブサイトの掲載情報、給与ベンチマーク調査といった、社外の労働市場データも取り込めることを謳っている点。これによって、AIは外部労働市場の動向の変化を加味したレコメンドが可能となります。もう一つの違いは、戦略に必要な人材の確保に重きを置いた非常にforward-lookingなアプローチだということ。現在の問題にどう対処するかではなく、長期的な戦略に基づきどう長期的に人材を確保して配置・維持していくかという、先行きを見たアプローチが特徴です」
このように、タレントインテリジェンスは、冒頭で挙げた人事が抱える課題を解決する新たな手法として注目されているのである。ただし、タレントインテリジェンスを活用するためには、いくつかの条件を整える必要がある、と大湾氏は指摘する。