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毎日毎日、CFOも、投資家たちと同じように、現代ファイナンス理論に従って意思決定を行っている。これら現代ファイナンス理論は、第2次世界大戦後の数十年間で発展してきたものだが、発表された当初は、まったくアカデミックな概念であった。しかし、今日では、企業行動のフレームとなる考え方になっている。
投資家行動を予測する理論は、投資計画からCEOの報酬額にいたるまで、すべての意思決定に影響を与えている。この結果、現代ファイナンス理論の使命である「株主に報いる」ことを、企業経営の主義とした人々が生み出された。マネジメントの現場では、まるでファイナンスの教科書を読んだ学生のように、これらの理論が刷り込まれ、まさに経営の根幹として機能している。
なぜなら、現代ファイナンス理論は、「ビジネスはすべて計量化できる」「マーケットもすべて科学的に実証できる」という信念に、その出発点があるからだ。しかし、うぶ声をあげてから二十数年を経た現在、多方面からいろいろな攻撃を受けている。例えば、現代ファイナンス理論には、間違った科学的パラダイムが適用されている、あるいは、ファイナンスとは、科学ではなく、技術なのだという批判である。個別に見ればともかく、全体となると、無視することができない規模の反論が存在する。
皮肉にも、現代ファイナンス理論の祖の1人である、シカゴ大学のユージェン・ファーマ教授から、もっとも強烈な攻撃がなされている。彼は、最新の研究レポートの中で、現在広く用いられている、株価の感応度を測る「β(ベータ)係数」の有効性に疑問を投げかけている。
攻撃の2番手グループは、従来の理論に代わるファイナンスの新しいパラダイムを模索している。彼らは、非線形力学とカオス理論がその基礎になると考えている。
3番手グループは、科学的アプローチを避けながらも、「投資家の行動は、必ずしも合理的ではないにもかかわらず、経営者が常に資本市場を第一に考えて行動する。その結果、アメリカの企業社会をダメにしてしまった」と主張する。この見方によれば、アメリカの金融市場は、高度に分断されてしまって、本来の役割である資本の配分と企業経営の監視に、たいして貢献していないことになる。さらに、アメリカ企業に必要なものは、ドイツや日本に存在する長期的視点を持った投資家ということとなる。
これらさまざまな視点が示唆することは、ファイナンスの将来に関する最近の討論が、グローバル経済における資本主義のあるべき姿を問う大きな議論の一端を担っているということである。つまり、この一連の討論は、単なるアカデミックな関心事から湧き上がったものではない。
現代ファイナンス理論を形成してきた従来の考え方は、20世紀後半のビジネスを左右する影響力の強いものだった。しかし、それを攻撃する新しい考え方が現れ、これらが、21世紀のビジネスのあり方を形づくっていく可能性がある。それゆえ、いま、もっとも重要なことは、「何が、新しいファイナンス理論なのか」を問いただしていくことである。
批判にさらされる現代ファイナンス理論
現代ファイナンス理論に対する批判は、実務上および理論上の2つの立場に分かれるが、どちらも金融市場のグローバル化、市場参加者の技術能力の拡大という現象が、その背景にある。この2つの現象のおかげで、マネジャーたちは、いままで頼りにしていた判断基準の正当性を信じられなくなってしまった。



