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今日の製造の焦点とは、いかに物を作らないか、つまり自社の技能の育成努力を拡散させるような部品、あるいはサプライヤーのほうがより効率的に作れる部品をいかに作らないで済ませるかを学び取ることを意味する。この考え方は今までしばしば提起されてきたが、これを実践的な理論にまで高める方法を見いだした管理者はほとんどいなかった。筆者の目的はまさにそこにあり、高度に技術的な製品分野での生き残り戦略と合致する調達(sourcing)意思決定のための新しい手法を見いだすことにある。このアプローチは以下のいくつかの単純な原則に基づいている。
□その製品の中核であり、かつその製造についてはその企業が明確に優れているコンポーネント(機能部品)に集中する。
□より大きな生産単位、基本的に低いコスト構造、あるいは性能向上への刺激の強さなど、サプライヤーのほうが決定的に比較優位にあるコンポーネントは外注(outsourcing)する。
□外注を、製造成果の改善への従業員の参加を引き出す手段として用いる。
筆者がなぜこの問題に取り組むことを決めたかについて、つまり単にこの手法に具体的な形を与えただけでなく、その緊急性を強調することになったある経験について、ある程度説明しておくべきだろう。1987年から1990年にかけて、筆者はカミンズ・エンジン社(Cummins Engine Company)の製造エンジニア兼業務管理者であったが、カミンズ社とそのサプライヤー、競合企業、そして顧客が、在庫管理の改善のためのJITセルの導入、柔軟性向上のためのコンピュータ数値制御技術の導入、あるいは品質改善等々のプロジェクトの推進に多大の時間を投入し、これによって、筆者の見るところでは同じコンポーネントを低コストで、しかもほぼ同等の品質でほとんど確実に製作できる小規模な機械工場に追いつこうと努力していたのを見てきた。
しかしこうした改善努力は、たとえ成功したとしても、はたして我々がそのために費やしてきた時間に見合うものであっただろうか。我々は企業の将来に具体的な影響をほとんど及ぼさないような標準型部品の競争力を高めることに努力を集中していなかっただろうか。つきつめていえば、カミンズ社のようなエンジン・メーカーは、燃費、排気、およびエンジンの耐久性に関する基準がますます厳格化される市場において競争している。にもかかわらずこれらのメーカーは、燃料システム、ピストン、およびピストンリングといった、燃費、排気、および耐久性に文字どおり決定的な役割を果たすコンポーネントをますますサプライヤーに依存するようになってきている。その一方で、これらメーカーの従業員のおそらく半分は、単純なハウジング、シャフト、フライホイールなど、他のところでいくらでも作れるようなコンポーネントの生産に携わっているのである。これらの標準型のコンポーネントは、顧客が重要と考えるような品質には何ら寄与することのない成熟した技術しか含んでいない。
企業がこの種の標準型部品を製造しているのは、多くの場合、企業の責任、つまり雇用の維持の目的のためである。しかし雇用の維持を主たる内容とした戦略は、製造が容易で、単純労働がほとんどの部品を内製化し、製作の難しい部品を外注するという結果をもたらしがちである。この結果、時間の経過とともに固定費は増大し、製品の差別化は消滅に向かい、そして製造技能が減退し、一方で従業員はぬるま湯の状態が続く。つまり企業の存続そのものが危うくなるのである。
根拠のない懸念
その後筆者は、カミンズ社の同業企業で同じような悩みを抱えている他の企業をもっと注意深く観察することにした。1990年から1992年にかけて、筆者はジョン・ディーア、ナビスター・インターナショナル、JIケイス社を含めて他の大手メーカー6社を研究してみた。これらの企業はいずれも、成熟した資本集約的産業で、かつすべて高度な技術製品の分野、要するにグローバルな競争企業に締め付けられている種類の事業に身を置いていた。これらの企業の調達政策はどのようなものだったか。
調査の結果、当惑するような事実が明らかになった。これら企業の多くは標準型部品に組織的に過剰投資する一方で、競争上の優位の源泉となり得る、またなるべき自社独自のコンポーネントの開発を怠っていたのである。しかもその過剰投資の理由が、他の何らかの戦略的課題のためのやむを得ない結果というわけでもなかった。通常これは比較優位、サプライヤー管理、および規模の経済性に関する込み入った検討の結果であった。製造責任者は何度となく次のような説明を繰り返したことだろう。"部品番号3015235の部品は生産単位が大きく、真の重要分野だ。だから我々は費用節減のためにはこれを内製にすべきで、まして第5工場に余剰能力があるとわかったのだからなおさらだ。しかし3095768番は全くの悩みの種で、我々は始終機械と格闘してる。だから我々はこれを作るサプライヤーを探した"。
"大量部品""厄介者"、何万もの部品がこういった言葉で片付けられていた。それぞれの部品を戦略的重要性の体系の中に位置づける試みはほとんど見られず、またサプライヤーの能力や自社が精通しているプロセス技術に関して議論が行われることもなかった。しかしこうした無関心の代償は決して小さくはない。製品にとって決定的に重要であり、かつ製作の困難なコンポーネントの設計および製造能力は次第に損なわれ、半分の賃金率でその困難な仕事をやり遂げているサプライヤーに比べて、賃金率から見た技能水準が低下し、そして何よりも自社の資源が何千もの部品に薄く拡散してしまうために、製造成果の改善が遅々として進まない。



