「顧客志向になる」ということを話すことが今日流行となっている。あるいは、顧客自身が完全に満足しているのかどうかを決めることになる実際の買い物を顧客が経験する真実の瞬間に注意を集中するということが流行になっている。あるいは、最前線の社員たちに力を与え、率先して、勇気を持って顧客を喜ばせることができるようにすることが流行となっている。

 しかし、これらのアドバイスはいずれも、顧客の関心を会社の経営に生かす実際の方法に何ら注意を集中していない。

 単純な真実は、すべての顧客の買い物経験が良いものか悪いものかを決めるのは、企業が行っている客からの注文を管理するサイクル(OMC=Order Management Cycle)によるのである。すなわち、注文予測を立てる段階から、販売後のサービスを行うまでの10のステップである。このステップがその企業のビジネスのやり方を決めているのである。このOMCはマネジャーたちに自分たちの会社を顧客の目で見る、という機会を与える。また、注文や買い物を顧客の立場で見て、それを経験するという機会を与えるのである。OMCの各ステップを実行しているマネジャーたちは、自分たちの角度ではなく、顧客の見る角度から仕事を行っているのである。

 OMCの過程にあっては、注文が取り扱われるときはいつも顧客が取り扱われていることになっているのである。注文がそのままになって処理されていないときは、顧客がそのまま放っておかれているということになるのである。逆説的であるが、顧客志向になるためには、顧客や商品を超えて、注文にエネルギーを集中することがベストである。すなわちOMCのあらゆる段階において、前述した真実の瞬間というものは起きるのであり、そしてOMCに影響を与えるすべての社員は、最前線の社員と同等の役割を果たしているのである。企業のあらゆる部門と顧客を組織的に結び付けているのは究極的には注文であるといえる。

 さらには、OMCに集中することはマネジャーたちに全社的な経営を改善するよい機会を与えるとともに、新たな競争優位も生むことになる。マネジャーたちは積極果敢なゴールを設定し、それを達成することができるのである。すなわち、注文に応じることのできる率を現状の80%から98%に高めるとか、請求書の正確度合いを99%にするとか、あるいは注文を受けて、その注文に応じるまでの時間を25%縮小するといったゴールである。そして、自分たちの担当部門だけにしか関心を持っていなかったチームにOMC全体を見せることによって、組織内のいろいろな変化が顧客に影響を与えるということを理解させることができるのである。OMCが狭い部門的な関心に取って代わることができたとき、顧客の反応ということが会社全体のいちばん大事な目標となり、各部門間の利害の対立は組織的に解決されるのである。マネジャーたちがこの教訓を学んで、このことを組織全体に広めていくためには、マネジャーたち自身が、注文と自分たちをバチッとステイプラーでとめるのがいちばんだ。そうすれば、注文がOMCのいろいろな段階を通っているときに、それを追跡することができるし、注文というものは顧客の代理にすぎないということを常に認識していることができるようになる。

OMCの全過程を実際に歩く

 一般的にOMCには10の活動が含まれており、中には重複したり、お互いに作用しあうものも含まれている(図1参照)。

 OMCは業界によって違うし、商品やサービスによっても違うが、街角のアイスクリームのスタンドから世界中にコンピュータを売っている企業に至るまで、ほとんどの企業が、この10の同じステップを持っていることには変わりない。本論文の中には、数多くの重要な教訓が出てくる。そしてそれらの教訓は企業に対して注文をした顧客の経験と、その企業の持つコストや品質に関する野心的な目標を達成する能力の両方を説明している。

 例えば、我々がOMCの各段階をある注文と一緒に"歩いて"いくにつれて、その注文、あるいはその注文に関する情報が実際に1つの部門から他の部門へ何回となく平行移動していることがわかる。ほとんどの企業は垂直な組織になっているため、注文が1つの部門から他の部門に平行移動するたびに、その注文は部門間にある割れ目に落ちてしまう危険を冒しているのである。

 このように水平の部門間に割れ目があることのほかに、OMCを追跡することから2つ目の教訓が学べる。それは組織の中の人々の知識に垂直的なギャップもあるということである。大きく業界の異なる18社の企業を訪ねてみると、必ずマーケティング部門の責任者、あるいは管理面の最高幹部たちが簡単に短く注文の流れについて説明してくれたが、その説明は正確とは言えなかった。組織のトップにある人たちはOMCを詳細にわたっては理解していないのである。そして、その組織の中で働いている人々は、自分たちの部門だけしか見ていないのである。そのために注文が各部門の境界線を越える、すなわち1つの部門から他の部門へ移ると、その注文は見えなくなってしまう。そしてその注文に対して、あるいはその注文を行った顧客に対して、だれも責任を取らないのである。