ヨーロッパ産業界の新しい情勢について、大抵のアメリカ経営者たちは次の2つのありきたりの認識しか持ち合わせていないようである。その1つは、EC統合による12カ国間の政策協調という長年の問題が解決し、その結果、新生ヨーロッパの首都、ブラッセルから定期的に出される指令に従って各加盟国が行動しなければならないということ。2つ目は、政治と産業との間には協力と話し合いの伝統があり、難題を円滑かつ友好的に解決するために必要な国家的コンセンサスを築く仕組みができ上がっていることである。

 ところが今日の環境政策の最大の関心事であるリサイクル(資源再利用)の問題に関する限り、この2つの認識はまったく当てはまらない。ECは10年以上もリサイクル問題、特に飲料容器のリサイクルについて共通の解決策を案出する努力を重ねたが、結局1985年に各加盟国に出された指令は、「法律によると自由意志によるとを問わず、飲料容器の環境に対する影響を最小限に抑えるため、各国それぞれが適当と考える方針を立案されたい」という趣旨のものであった。

 現在各国は、与えられた自由に従って思い思いの方法や措置を講じているが、その唯一の共通点は、リサイクル活動をその地方行政ではなく、企業の責任に帰していることである。ECはすべての包装容器の廃棄物に対処する新しい指令についての合意を取りまとめる努力をしている。しかし、加盟国の中にはそれに先行する国もあって、ブラッセルの本部は、歩調を合わせることに苦労している。

 今後10年間は、製品自体だけでなく、使用後の処理についても責任を持たなければならないメーカーがますます増えていくだろう。またその対象品目もまもなく、いままで規制の主な対象であったビンや缶などの容器には限られなくなるだろう。意欲的な国々では、すでに自動車、タイヤ、バッテリーの他に、洗濯機やコンピュータなどの電子部品をも回収し、再利用することを業者に義務づける規制が検討されている。

 これらの義務は、法律として課せられることもあるだろうし、任意の形をとりながらも、実際は法規制を後ろ盾とした業界と行政の間の協約によることもあろう。いずれにせよ、ヨーロッパ企業はその操業形態を変えられていくことに間違いない。予想される変化について考えてみると、

□企業は環境保全のための厳しい条件を満たすため、いままでの競争相手との密接な協力も必要になる。

□リサイクルは製品の設計、製造の立地条件、さらに商習慣さえも変えていくだろう。

□ヨーロッパでは埋め立てによるゴミ処理地の余地が少なくなってきており、他の処理方法が必要とされるため、新しいタイプの産業が生まれる可能性がある。

リサイクル先進国「ドイツ」の展開

 ドイツを見ればヨーロッパの将来を占うことができる。ドイツはヨーロッパのカリフォルニアとたとえることができる。ヨーロッパで最も広く、最も豊かな国であるドイツは、最も大量の廃棄物を生み出す一方で、強力な環境運動団体を有する国でもある。以前からドイツの環境グループは、国内において年々増える廃棄物に神経を尖らせてきた。政府は、使い捨て容器を廃止する方向で飲料品業界と任意の交渉を繰り返してきた。しかし、その努力も実を結ぶことなく、市場に流れる(そして捨てられる)使い捨て容器の数は増え続けた。

 ドイツはここ数年間、ECの法律に触れることを恐れたせいもあって、この問題をさらに推し進めるのをためらっていた。しかし、事態は変わったのである。ビールとソフトドリンクは必ず保証金のついた詰め替えビンで販売すると定めたデンマークに対して、ECの委員会は反対を訴えたが、通じなかった。委員会は、このデンマークの方針はEC市場を脅かすと主張した。しかし、欧州裁判所は委員会とは反対に、環境的配慮が自由貿易の主張より優先すると裁定した。