見出しに踊る事業の成功物語や画期的な成果の陰に、世界的な競争力を持つための英知が静かに目立たずに深く埋もれている。ミッテルシュタンドと呼ばれるドイツの中堅企業は、小柄で目立たない存在ながら優れた輸出競争力と市場志向性を持っている。クローネス、ケルバー/ハウニ、ヴァイニッヒ、ヴェバスト、テトラヴェルケといった企業は、メルセデス・ベンツ、ジーメンス、ボッシュ、バイエルなどと比べて派手さはない。しかし、国際競争力を表す最も厳しい基準を世界市場でのシェアの大小とするなら、真のスーパースターがミッテルシュタンドの中にかなりの数でいることになる。それぞれの世界シェアは70%から90%にもなり、全体を合計すればドイツの貿易黒字の相当部分を稼ぎ出している。この事実は我々にとって脅威に映る。ドイツは1986、1987、1988、そして1990年には世界最大の輸出国であり、1990年ではアメリカより6.8%、日本より47.2%も多く輸出しているからである。

 ミッテルシュタンドは世界的競争ではチャンピオンであるが、その大部分は隠れた存在である。その理由は2つある。第1に、飲料品用ラベリングマシーン、金属フィルター、製本用繊維製品、自動車用サンルーフといった彼らの製品のほとんどは、最終製品の製造過程で使われたり、他の部品などと一緒に使われるからである。したがって消費者の目には入らなくなってしまう。しかし、ドイツの中堅企業が自分たちが無名であることを享受していることがより重要な理由である。

 彼らの中には恥ずかしがって広報活動などはしないし、マスコミとの付き合いをしないという明確な方針を持っている企業もある。溶接機器のリーディングメーカーのある経営者は次のように述べている。「自分たちが成功した方法を公表する気はない。最近活気のない企業を助ける気もない」

 ミッテルシュタンドの多くはプライバシーに敏感であるが、ドイツの隠れたチャンピオン39社が戦略や行動の研究に参加することに合意してくれた(囲み「隠れたチャンピオンの実像」参照)。私は、記入式の質問票に加えて、私自身でインタビューを行い、さらに、多くの企業、最高経営責任者、企業幹部に関する個人的な知識を加えて考察している。これらの情報を総合すると5つの特徴が浮かび上がる。すなわち、隠れたチャンピオンは――

□地域的な多角化に戦略の焦点を当てている

□顧客価値などの要素を重視する

□技術と顧客との密着性とを融合させる

□自社の技術優位性を拠りどころとしている

□企業と従業員との相互依存関係を創り出している

 これらは想像するところとは違って、実に地道なものである。ドイツ特有の成功の要素とされる職人気質、優れた徒弟制度、職人訓練制度などとは異なり、ミッテルシュタンドの成功の要因であるこれらの戦略や行動は、規模や国籍に関わりなく他の企業にもあてはまる。これらのドイツ企業は、世界市場でリーダーシップを握るには、大きな技術的成功をおさめるより、改善点を常に探し求め、海外市場へのサービスに責任を持ち、根気よく活動することのほうが重要であることを示している。