「オーナーシップの移転」という本質的支援
変革を一時的な盛り上がりに終わらせないために、Ridgelinezが最も重視したのは「変革のオーナーシップを移転させること」(同社執行役員副社長の小野敦史氏)である。ウォーターフォール型のシステム開発のように決まった要件を上から下に流すのではなく、経営と現場のイテレーション(反復)を繰り返し、現場の意思を計画に織り込んでいくプロセスを徹底した。
その際、Ridgelinezは戦略や施策の背景と意図を正確に言語化する「アーティキュレーション」と、それを視覚化する「ビジュアライゼーション」にこだわった。言語化と視覚化によって互いの意思が正しく伝わることで、現場の人間が「自分事」として自発的に動き出すことを企図したのである。特に全社の指針となるDX戦略、AI戦略、デジタル人財戦略などについては、事業での実行性を前提とした綿密な視覚化、言語化を行った。
また、経営の高度化(MX)においては、データの定義をめぐる変革も行われた。各部門が独自に集計したり、解釈したりした数字ではなく、会社としての「オフィシャルなデータ」を定義し、閲覧権限を設定したうえで参照できる環境を構築したのである。オフィシャルなデータとは、財務諸表に載せる数字という意味ではなく、経営の意思決定に不可欠な、定義が統一されたタイムリーな数字を指す。役員がこのデータに基づいたクイックな判断を始めれば、その変化はおのずと組織全体に伝播し、文化を変えていく。
こうした仕組みの実効性と持続性を担保する最後のピースが人財の変革である。大成建設ではRidgelinezとともに体系化したデジタル教育機関であるDXアカデミーを2023年に開講した。DXアカデミーは、受講者の理解度やマインドに合わせて3つのレベルを設定している。第1段階の「デジタルリテラシー獲得レベル」は、全社員必須の基礎教育となっている。第2段階の「デジタル積極活用レベル」は各部署でDXを推進する人財の育成を目的としており、約1700人が受講済みだ。そして「DX牽引レベル」は、全社DXをさらに加速させられる人財を増やしていくためのプログラムである。
DXアカデミーでは、事業部門のリアルな業務課題に基づき、一人ひとりが異なるテーマで学習し、自部門の業務変革に活かすなど、成果を見据えた実践的な教育にこだわっている。
Ridgelinezは、戦略策定から実装、文化定着まで、支援に携わったすべてのプロフェッショナルたちが一貫した体制で大成建設に伴走し続けた。そのために、戦略とテクノロジー、組織変革といった専門領域を「越境」するチーム編成を維持した。4年半の間、プロジェクトマネジャーとして大成建設の変革に寄り添ってきた浦谷氏が、「Ridgelinezの人間でありながらも、自然と大成建設社員の思考やマインドで変革に取り組んでいる」と語るほど、両社の連携は不可分なものとなり、強固な変革の基盤を築き上げている。
建設の枠を超えた新たな収益モデル確立へ
大成建設は今後、DXをさらに加速させるために「生産システムの変革」を起点とした「サービス・ソリューションのDX」を推進する。建設ライフサイクル全体をデータでつなぐことで、協力会社を含むサプライチェーン全体の変革を主導するとともに、データなどを活用した新たなサービスの提供や、施設の運用・保守(O&M)などの事業領域を拡大することで、「建設の枠を超えた新たな収益モデル」を確立することを目指している。
同社のこの挑戦を、Ridgelinezもさらに強力にサポートしていく構えだ。小野氏は、大成建設が掲げる3つの「つなぐ」というビジョンの実現を、これからの支援の柱に据える。まず1つ目は、「社内プロセスをつなぐ」こと。たとえば、DXアカデミーでの学びを現場での実践へと連動させる、点と点をつなぐ活動である。2つ目は、「建設業界をつなぐ」こと。専門工事業者や発注者を含めたエコシステムを、デジタル技術とデータ、そして人でつなぐサポートを推進していく。そして3つ目が、「社会をつなぐ」だ。デジタルでつなぐ取り組みが建設のライフサイクル全体へと波及することで、社会全体に貢献する価値を創出していく。このビジョンの実現を、Ridgelinezは支え抜く決意だ。
大成建設がたどってきた軌跡は、持続可能な変革を志すすべての企業に、重要な示唆を与える。Ridgelinezの浦谷氏は、「多岐にわたる変革テーマがある中、戦略策定から実行の共通基盤・ルールづくりまで、一貫性を持って取り組み続けている点に大成建設のすごさがある」と分析する。
また、小野氏は「DXとはつまるところ『人が動き、人が変わること』に集約される」と指摘。DX戦略部の兼務メンバーのように、全社を俯瞰する「鳥の目」と現場の課題を鮮明に捉える「虫の目」を併せ持つチェンジリーダーの重要性を強調する。そして、大成建設の事例は、意思を正確に言語化・視覚化することによって、組織が動くことを証明しているといえるだろう。
大成建設とRidgelinezが歩んできた道程を、単なる一企業の成功譚で終わらせるのではなく、確かな羅針盤として活用することが、大手企業の自己変革の行く先を明るく照らすはずだ。
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