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近年、小売業界で最も注目すべき現象は、メーカーからトレード(問屋及び小売業:訳者注)のほうに力が移動してきているということである。頻繁に購入され、大々的に宣伝されている商品を圧倒的に販売している小売業は、セーフウェー、ウォルマート、クローガー、Kマート、トイザラス、ウォルグリン、CVS、ホーム・デポ、サーキット・シティなどのビッグ・チェーンである。
相対的にメーカーが力を失ってきたことが1つの理由となって、メーカーでは宣伝、特に全国宣伝を徐々に減らしてきている。そして、消費者やトレードに対するプロモーション(販促)により多くの資金を投入している。しかし、短期間に消費者やトレードにインセンティブを与えるやり方は、それに本来備わっている非効率性ということによって、数多くの大きな問題を、生じさせている。すなわち、スロッティング・アローワンス(新製品を取り扱ってもらうために支払われる手数料)の支払いやフォワード・バイイング(先物買い)、あるいはダイバージョン(商品の地域転送)、さらにはプロモーション・プログラムの実行などのコストが大変高くなってきているということである。これらの問題は、トレード及びメーカーの両方にとって問題となっていることであるが、特にメーカーにとっては大きな問題となっている。
メーカーは、最近多く用いられ始めたプロモーション・プログラムに対して、大変多くのお金を支払っている。例えばプロクター・アンド・ギャンブル社のマネジャーたちは、セールスマンの25%の時間、ブランド・マネジャーの約30%の時間がプロモーションを企画し、実行し、監督することに費やされていると推定している。他の企業にとってもこのコストは高いものとなっている。このプロモーションが大々的に利用されている環境にあって、ディストリビューター(問屋及び小売業:訳者注)が増大したコストを転嫁するために、消費者は自分たちが買う商品に対してより高いお金を払っている。例えば食品業界においては、メーカーやディストリビューターがトレード・プロモーション(トレードに対する販促)を行うことからのみ増大するコストは、推定で小売販売高の2.5%、ないしはそれ以上となっている。この中にはプロモーション・プログラムを管理するコストも含まれている。プロモーションやそれに関連した行動、例えばスロッティング・アローワンスなどには、本来メーカー及びディストリビューターがゲームをし合うとか、あるいは力を競い合うといった要素があり、そのことが流通チャネルの中に大きな不信感をつくり上げてきている。そのために、メーカーや問屋、小売業者たちは、互いに話をつけなければならない大きな問題を抱えているのである。この互いの不信感といったことが過去2年以上、「スーパーマーケット・ニュース」の大見出しを支配してきたのである。以下は、それらのニュースが伝えた話の若干の例である。
□消費材メーカーの中には、小売業者が破損したり腐敗した商品の苦情を言ってくることを予測して、あるいは約束したとおりのすべてのプロモーション・アローワンスを受け取っていないと言ってくることを予測して、売掛金に対して大きな準備金を持たざるを得なかったところもあった。
これらの苦情は事前に予測できることではない。例えば、1988年度にクラフトでは3500万ドルを貸し倒れ損失としている。このような例は小売業とメーカーの間に大きな摩擦を起こしている。というのは、小売業者は他の方法では得られない値引きを得るために、そのような苦情を言ってきているということが知られているからである。明らかにされたこの苦情の数は、これまでにない高いものとなっている。
□昨年、アメリカ最大のスーパーマーケット・チェーンのウイン・ディクシーとクローガーの2社は、ピルスバリー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、その他のメーカーの若干の商品をボイコットした。その理由は、これらのチェーンの店があるすべての商圏において、メーカー側が一定の価格で商品を納入するということを拒否したからである。ウイン・ディクシーは大手メーカーに対して、我々が仕入れるすべての商品の価格は、我々の店舗があるあらゆる地域で提供されている中で最低のプロモーション価格にしてもらいたいと告げることによって、このようなややこしい事態を招いたのである。そのときに主張された目的は、ウイン・ディクシーの営業をスムーズに行うということと、消費者のお金を節約するということであった。メーカーはウイン・ディクシーの要求を、いろいろな地域ごとに異なる値段をつける自分たちの能力を侵害するものであると受け取った。そこでウイン・ディクシーでは、ピルスバリー、P&G、クエイカー・オーツ、及び他のメーカーの数百品目を同社の店頭から取り去ったのである。最終的には交渉によってこの行き詰まりは打開できた。
□過去何年もの間、ケロッグではストップ・アンド・ショップや他の企業が要求するスロッティング・アローワンスの支払いを拒絶してきた。このスロッティング・アローワンスというのは、マス・マーチャンダイザー、特にスーパーマーケット・チェーンがパッケージド・グッズのメーカーに対して、彼らの新製品を店頭で扱うときに要求するアローワンスである。これらのアローワンスは、普通1つのチェーンが1品目を扱う場合に、4ケタから5ケタの金額となっている。このケロッグのやり方に対抗するために、ストップ・アンド・ショップでは一時期、同社の新製品であるいろいろな種類のシリアルの扱いを拒否した。今日、小売業者がメーカーを支配下に置いているために、このような戦いはよく起きていることである。例えば、通常百貨店や他の小売業者は、納入業者に対して共同宣伝費、粗利の保証、返品の保証、店内で使った陳列什器のコストの支払いを要求したり、それぞれのメーカーの商品を店頭で販促するために店内の販売員や在庫補充員の派遣を要求している。
今日、プロモーションが大変多い環境の中で、不公平だという感情がメーカーの中に深く根づいているが、このことはプロモーションのコストが上昇していることや、これらのプロモーションの効率が悪いということと深く関連している。このように不信感があることによって、データの交換などというような重要な問題で、メーカーとディストリビューターの間で協力がされないようになっている。また、このプロモーションのやり方は、不公平な競争を掲げた法律の違反に対して、長いこと関心が薄かったワシントン政府の態度も変えつつあるようだ。
ここで我々は、スーパーマーケットで売られている主要な商品の中で広く行われている1つの習慣であるフォワード・バイイングということを綿密に調べることによって、爆発的に増大しているプロモーションの副産物について調べてみることにする。主要な商品とは加工食品であり、HABA(健康、美容、衛生用品など)であり、ゼネラル・マーチャンダイズ(非食品)である。我々はまず、フォワード・バイイングの影響を調べるとともに、次にトレード・プロモーションのディストリビューション全体、すなわちメーカーや問屋、小売業、消費者に与える全般的な影響を検討してみる。我々は1つの一定の価格をつけるという価格政策がコストをうまく管理できるだけでなく、関係者間に協力と信頼感をもたらすものであるということをここで示唆しておく。
食品スーパーマーケットにおけるフォワード・バイイングはコストが高く、効率の悪いものであるということを分析することは、他の業界のメーカーやディストリビューターたちが自分たちの裏庭で行っている商慣習にスポットライトを当てることに役立つかもしれない。恐らく、プロモーションということは最も広くスーパーマーケット業界で行われていることであろうが、フォワード・バイイングや商品転送ということは、例えばアスレチック用のフットウエアの業界でも普通行われていることであり、スロッティング・アローワンスということはドラッグストア・チェーン業界でも知られていることである。



