ゲーリー・ウィルソンは1985年に、世界最大の娯楽関連会社ウォルト・ディズニー社の執行副社長・CFO(最高財務責任者)に就任して以来、その手腕を高く評価されてきた。創造的資産管理と鋭い財務技術、そして何百万ドルもの報酬。それはすべて彼が名実ともに第一級のCFOであることを物語っている。だが、彼は単なるベテラン財務専門家ではなく、戦略家、長期ビジョンを持つ人、イノベーター、価値の創造者などいくつかの顔を持っている。その証拠に彼の実権は、通常の財務分野の外にまで広く及んでいる。ウィルソン自身も"私は財務の専門家というより、むしろ財務に強い企業戦略家だと思っています"と、それを認めている。

 この違いは強力な武器である。1980年代にはCFOの権限は、銀行ローンの取り決めや財務諸表の発表などを含む従来の業務から、企業買収の防衛策などの分野にまで広がった。ウイルソンはそれをさらに、価値の評価や保持にとどまらず、価値の創造の域にまで拡大し、CFOの役割に一大革新をもたらした。

 ウイルソンによると、"CFOは有能なマーケティングあるいは業務担当エグゼクティブと同様に、創造性によって付加価値を生む"という。要するに、所有権、支配権、資産をはじめ、戦略目標を達成しつつ資本コストを最適化する方法などについて、従来の考え方を見直す。さらに、企業の価値を本質的に高めるのは何かという問題について、新たな視点で考える、ということなのだ。

 ウイルソンの経歴は、創造性によって実現された数多くの財務管理手法で散りばめられている。例えば、マリオットの出納責任者を経て、CFOの地位にあった12年間に、彼が活用した"オフ・バランスシート"財務管理がそれである。それに基づいて、マリオットはホテルチェーンを売却し、経営だけを請け負う契約を結んだ。その結果、マリオットは利益率の低い不動産に、資本を縛られることなく、急速に拡張戦略を展開することができたのだ。さらに、ユーロ・ディズニーランドの財務構成について、彼が用いたアプローチもこれと同様であった。

 ウイルソンは大手企業の財務部ではなく、企業家グループの一員として、社会への第一歩を踏み出した少数派CFOの1人である。彼が後に応用した技能や理念の多くは、最初に入社したフィリピン系の私企業(トランス・フィリピンズ・インベストメント・コーポレーション)で、CFOの役職にあった時代に体得したものである。この点についてウイルソンは、"小さな会社で高い地位に就くと、ビジネスについての視野が広がり、創造性を発揮するチャンスが得られる"と語った。当時この会社の経営陣が、農業関連分野のコングロマリットを買収するために、金融機関から巨額の融資を受けた際に、ウイルソンは早くもLBOの手法を学び取った。"私たちはセメント工場、ジュート袋製造工場、小さな製糖工場などを売った。さらに、大手製糖工場のキャッシュ・フローも加えて、借入金の返済と東南アジア最大の建設会社の買収に充当した"と彼は当時を振り返る。ウイルソンによると、このアプローチは、今日大手企業が盛んに行っているLBOと基本的には同じであるという。

 HBRの副編集長ジェラルディン E. ウィリガンによる以下のインタビューの主要テーマは、"高度の財務技術をもとに、創造的な企業戦略を展開することによって、どのようなすばらしい成果が得られるか"という点に集約される。

HBR(以下略、ゴシック部分はHBR):現在のCFOの役割は、25年前と比べて変わったか。

ゲーリー・ウイルソン(以下略):今日ではCFOの役割ははるかに重要となった。25年前にはロケットの科学者でなくともCFOになれたが、今日では財務の占める役割が大きく変化した。そのためCFOは一層多くの技術的、戦略的技能が必要となった。1950年代には、プライムレート(一流企業への最優遇借出金利)が年に0.25%変動すると、大きな政策変更とされた。そして、景気後退ムードの影響で、他人資本の比率は低かった。1970年代と1980年代になると、インフレの高進によって資金調達コストが上昇した。一方、1970年代初期に、金融市場の規制が撤廃されたために、企業は一層複雑で創造的な方法で、資金調達をしなければならなくなった。その結果、資本コストを最適化することが、企業の経済的競争力を強めるための大きな要因となった。

 企業がますます多くの有能な財務専門家を求めるにつれて、財務分野には、創造性豊かな幹部社員が一層多く集まるようになった。その中の一部は、財務だけではなく、一層広い分野の業務も担当するようになった。例えば、私がマリオットに入った当時は、ベテランの財務担当者は見当たらなかった。しかし今日では、マリオットの経営幹部の大多数は、財務畑の出身者である。マリオットの業務はホテル経営であるが、財務のベテランが重要なポストを占めている。

 ディズニーでのあなたの役割について伺いたい。