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最近のHBRに掲載された"Eclipse of the Public Corporation"(「LBOアソシエーション」としてDHB 1990年1月号に掲載)と題するレポートは、公開企業の持つ制度的な持続力と再生への独自の能力を過小評価している。このレポートで、企業の財務と支配の分野で著名な学者マイケル C. ジェンセンは、アメリカ経済における所有と支配の構造の中での革新について論じている(1)。
私は公開企業に対する彼の批判の多く、とりわけ過去20年以上にわたる惨めな企業業績には同意するが、"LBOアソシエーション"を優れた組織形態であるとする主張には大いに反対である。急進的で包括的な公開企業改革のプログラム(どのように取締役が支払いを受け、企業が支配され、企業戦略が評価され、余剰資源が株主に分配されるかといった、新しいアプローチに基づいたプログラム)によって、この重要な制度を新たに再生させることが可能である。事実、再生のプロセスが進行中である。
はっきりさせておこう。公開企業は、救済するに値するものである。公開企業は組織形態として本来的に柔軟であり再生が可能である。市場主導型経済における安定と進展にとって重要な財産であり、LBOのような過渡的な組織形態ではまねすることができない。企業の持つ制度上の永遠性は、サービスや製品の長期的向上を期待する顧客、次世代の部品について投資決定を行うサプライヤー、何十年にもわたって働くであろう従業員にとっては欠くことができない。このことは盲目的に組織の現状を有利に論ずるものでないし、事業単位についての確固たる継続的な評価に反対するものでもない。だが、公開企業は取引されたり、あるいは一時の利益を求めて非公開化される資産の集合体以上の存在なのである。公開企業は活気に富んだダイナミックな制度である。確かに長期にわたって低い業績を示しているが、完全に自己修正することが可能なのだ。
さらに、LBOにおける効率性と価値創造の背後にある原動力、すなわち株主に報い経営者を鍛えることになる負債を多額に抱えることは、企業の戦略や柔軟性に真のコストを課すことになる。ジェンセンも進んで認めているように、買収した企業は公開企業よりも財務上のトラブルに陥ることが多い。トラブルに陥った非公開企業はしばしば新しい経営陣の下で、正式な裁判上の手続きに入らないで(彼は"破産の非公開化"と呼んでいる)、速やかに、かつ効果的に再編されていくものとジェンセンは我々に確信させる。
負債それ自体は連邦破産法第11条ないし清算を招くものではないという点でジェンセンは正しいといえる。しかし、買収した企業の間で、しばしば自発的な再編成が予想されることをあっさりと忘れてしまってはならない。厳しいグローバルな競争の世界においては、再編成と清算との違いは特に意味のあるものではない。どちらにせよ弱い企業はほとんど確実に競争上の戦いに敗れてしまう。今日の環境では、変化に対する素早い対応(生産や流通における新しい技術、消費者の嗜好の予期しない変化、大きな経済的混乱に対して適応する能力)が重視されている。それゆえ途方もない負債を抱えていない公開企業の財務上の柔軟性が要求されるのである。
最後に、そしてむしろ皮肉になるが、株主のために非公開化するという行為そのものが、会社の価値について唯一の最も良好な情報源(すなわち日々の株価)を失わせることになる。公開企業の経営陣は、将来を正確に評価することに大きな関心を抱いている客観的な投資家の集約的な判断から、自分たちの業績に対する継続的なフィードバックを受けている。不完全であるかもしれないが(そして公開企業の経営陣の中にはその点について不本意ながら認める者もいるだろうが)、どれだけ多くの投資家が進んで株式に対して投資しようとするのか、企業の長期見通しを測るのにこれより優れたバロメーターはない。株式市場が発するシグナルを戦略的な考慮に取り入れ統合していくことは、公開企業構造においてのみ得られる有利性である。
ジェンセンはまだ私の話を聞く必要がある。我々のように公開企業を評価する人たちは、その重大な欠陥を認め、改革のための協議事項を提出しなければならない。今日我々が目撃しているのは、だれが大規模な公開企業を支配するのか、どちらの利害に会社が運営されるべきかといった、経営陣と株主との間における経済的及び政治的な戦いである。私はこの戦いの望ましい結果について、ジェンセンと争わない。しかし、株主主導型の世界での制度的な構造であるという見方には賛同しない。
LBOは過渡的な組織形態
まず、非公開化の見通しについて話を戻そう。LBOアソシエーションは公開企業に対する、広く再生可能な代替手段であろうか。LBOの組織形態としての歴史が短く、信頼できるデータが不足しているため、長期間にわたって確信のある結論を引き出すことは難しい。にもかかわらず、LBOの動きは自己を制約する現象であること、またLBOアソシエーションが事業活動を組織する卓越した手段として、公開企業にとってかわる可能性が薄いことを暗示する十分な証拠は手に入る。それはこれまでのところ、LBOは限られた市場であり、限られた生命であるという単純ではあるが強力な理由があるからである。
LBO組織形態は、一部の公開企業についてのみ慎重に適用できる。ジェンセンが認めるように、公開企業は、利益の上がる投資機会が会社の内部で生み出すキャッシュを上回るような成長産業に向いている。彼は"長期的に成長が緩やかであるとか、内部で生み出される資金がそれを振り向ける収益性のある投資機会を上回るとか、規模縮小が最も成果の見込める長期戦略である"といった広範囲の業界には公開企業は向いていないと論じている。このところから我々は、1988年に行われた770億ドルの買収が、公開企業の社外保有株式のたった2.5%でしかないことを思い出す。我々がこれまでに見てきた取引が、単に氷山の一角にすぎないことを示している。彼は公開企業が新しい組織形態に移行すべき業界として、航空宇宙、自動車と自動車部品、銀行、食品加工及びいくつかの他の業界を挙げている(2)。
我々は、非公開化取引の対象となる企業や業界の範囲について取り組んでいるように思う。コールバーグ・クラビス・ロバーツ社(KKR)の最近の研究では、LBOが向いているのは限られた環境下であることを大いに強調している。KKRがターゲットとするのは、次のような企業である。強力で予測可能なキャッシュ・フローがある企業、すぐに分割可能な資産や販売可能な事業を持つ企業、よく知られている商標や急速な技術変化に影響を受けない市場で強力な地位にある製品を持つ企業、低コスト生産者としての地位、及び市況の振幅に対して限られた感度を持った企業(3)。航空宇宙、自動車、銀行業界の中で、こうした合理的な基準に合致する企業のリストを積み上げることは私には困難である。



