「水と生きる。SUNTORY」
「志」から「言葉」を紡ぎ出す
2000年代初頭、サントリーは創業100年を超え、酒類や飲料、健康食品など事業分野の絞り込みやグローバル化を志向する中で、CIの見直しが求められていた。サントリーホールディングス常務執行役員でコーポレートブランド戦略部長の土田雅人氏は当時をこう振り返る。
常務執行役員
土田雅人氏
「2003年に日経BPが行った環境企業イメージ調査で、当社の評価は14位と、競合社の後塵を拝していました。他社に劣ることのない環境活動を行っているにもかかわらず、認知度が低い。そこで、まず環境メッセージを発信することにしたのです」
こうした課題を理解し、具体的な取り組みについて学び、それを推進するエネルギーを共有する中で、サン・アドの古居氏は、単なる「環境広告」の枠を超えた本質に気づく。サントリーは、水がなければ何もつくれない企業である。その水を生み出す自然の生態系を守ることは、つまり、サントリー自身を守ること。環境保全活動が事業活動に直結し、循環している。この気づきが、一つのステートメントへと結実する。
農民は、「土」と生きる。漁師は、「海」と生きる。詩人は、「言葉」と生きる。では、サントリーは、何と生きるか。そこから導き出された答えが、「サントリーは、『水と生きる』」だった(図表)。オリエンテーションの中に潜んでいた企業の本質を探り当て、それを言語化したのだ。この言葉は2003年、環境広告のメッセージとして採用されたが、「水と生きる」をめぐるサントリーとサン・アドの関係はこれで終わらない。むしろ、ここからが始まりだった。
この頃、サントリーは佐治信忠社長(当時。現サントリーホールディングス会長)が第2の創業と位置づける2005年に向けて進めていた改革の一環として、CIの一新に踏み切ろうとしていた。コーポレートメッセージの策定に当たり、いくつかの候補の中から「最もふさわしい」と佐治社長が選んだのが「水と生きる」だった。
「当時社内では、この言葉で本当に伝わるのか、という不安の声もありました」。土田氏は率直に打ち明ける。しかし、佐治社長は即座に採用を決断したという。これにより、「水と生きる」は社内公募で選ばれたウォーターブルーのロゴマークと一体化。新CI「水と生きる SUNTORY」として宣伝広告、製品、ウェブサイトなど、あらゆる顧客接点に登場していく。
「水と生きる」はその後、環境保全だけでなく、社会との共生、新たな価値創造への挑戦という概念を加える。それが、2023年に策定されたパーパス「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命の輝き』をめざす。」にもつながっていった。
2005年以降、企業の環境ブランド調査においてサントリーは常に上位に名を連ねるようになり、2026年には日経BPコンサルティングの調査による「ブランド・ジャパン2026」で、消費者が選ぶ強いブランドの総合力ランキング1位に選ばれた。「サントリーの企業ブランド価値を深く理解し、客観的な視点で伴走してくれる貴重なパートナー」と土田氏はサン・アドを評価する。
