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世界最大級のブランドコンサルティング会社インターブランドが毎年発表するブランド価値ランキングの最新版では、コアな強みを業界を超えて拡張しているブランドが歴史的な上昇を遂げた一方、従来の業界ポジションに依拠するブランドの苦戦が相次いだ。AIが購買意思決定を代行し始めたいま、強いブランドこそがコモディティ化を回避し、持続的な企業価値の成長を遂げるための最強の資本となる。インターブランドのマンフレディ・リッカ氏と佐藤紀子氏に、その本質を聞いた。
AIエージェント時代のブランドの役割
インターブランドが毎年発表する「Best Global Brands」と「Best Japan Brands」の最新版に共通するのは、成長と低迷の振れ幅が過去に例を見ないほど大きいという事実だ。
同社グローバルCSO(最高戦略責任者)、マンフレディ・リッカ氏は「データを活用し、カテゴリーをまたいでアリーナ(顧客享受価値)を拡張するブランドは、AI革命から大きな恩恵を受けています」と、ランキングに関する考察を述べる。
この顧客享受価値の本質を、日本事業統括責任者の佐藤紀子氏はシンプルに説明する。「Appleをガジェット(電子機器)のブランドだと思っている人はいません。顧客がAppleに求めているのは、遊び心や創造性を持って生きたいという感情の充足です」。
業界という既存の枠を超え、供給者起点の「提供価値」ではなく顧客起点で市場を捉えてブランド価値を拡張すること──インターブランドはこれを「アリーナ思考」と定義する。成長ブランドに見られる共通項は、まさにその実践にほかならない。
生活者に代わって自律的に情報を収集し、商品の選択から購入まで完結させるAIエージェントが、近い将来日常に浸透するだろう。アルゴリズムが最適解を選択する世界では、価格や機能の優位性だけで戦うブランドはコモディティ化し、数ある選択肢の一つとして埋没する。リッカ氏は「強いブランドこそが、AIによる選択から外れることを回避する唯一の手段であり、事業成長の原動力です」と指摘する。
日本企業にとって、グローバルのトップブランドが取るアプローチを再現することが最適解とは限らない。欧米の主要ブランドには、アルゴリズムを駆使してユーザー一人ひとりの趣味・嗜好に合わせたパーソナライズと業務効率性を両立させ、顧客の時間をどんどん占有していくダイナミズムがある。巨大プラットフォームの内部に顧客を取り込んでいく発想だ。佐藤氏は「日本のブランドは必ずしもそれを模倣する必要はない」と断言し、「デジタルテクノロジーによって顧客体験を豊かにし、関係を深化させるのが日本らしいブランド価値伸長のアプローチではないか」と続ける。
その実践事例として佐藤氏が挙げるのが、スポーツウェアブランドのアシックスである。