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ある会社は技術的先進性を追求し、その結果として市場における報酬を刈り取ることができるのに、他方では同種のプロジェクトに相手に負けぬだけの資本を注ぎこみながら、市場で開花させることができぬ会社があるのはなぜか。
本稿の著者はR&Dへの投資をすすめる9社を研究し、技術力を市場対抗戦略の一環に加えることに見事な成功を収めている会社と、成功していない、はっきり言えば惨敗している会社との格差を浮かび上がらせようとしている。特定企業のトップの技術志向性、技術力を支持、擁護するようなプロジェクト選別基準、その企業の技術志向性を強化するような体制、組織などの度合いによって、その企業の技術水準の高低が定められてしまう。著者が下した結論は、技術を重視する戦略が必ずしも最良のものとはいえないが、一度技術を他社と対抗する上での武器として開発することを決断したならば、R&D分野への投資だけに満足していてはダメだということである。
何人も疑問をはさむ余地のないことは、米国のメーカーが外国企業との競合に今より強くなるために必要不可欠なことがR&Dへの投資強化だという点である。実際、技術力というものは経済活動という戦場で圧倒的武器となりうるのである。しかし、単にR&D投資を強化しさえすれば、市場対抗武器としての技術力の開発に成功すると考えるのは早計である。ライバル企業が新技術開発に多額の投資を続けている中で、そうでない企業が業界の技術開発面でのリーダーシップを握り続けてきたという事例が光学、集積回路、ソフトウェア開発、化学といった分野に現実にみられるからである。
例えば、ある大手石油会社が、小石油会社のほぼ9倍もの資本を投入して輸送機器用の新ブチル合成物の開発に努めたことがあった。その巨大石油会社は、最終的にはくだんの合成物の開発は成功見込みなしという結論を下してしまった。それから1年もたたぬうちに、先の小企業が問題の合成物を市場に導入、今日に至るまでこの商品から多大の利益を引き出している。
これら2社の経験間に生じた相違の原因は何なのか。R&D投資額だけで決められないとすれば、技術開発の成功を時には阻み、時に促進させる諸要因が他になければならない。国家経済および個々の企業活動の両面から技術力の効率的活用が声を大にして叫ばれている現状からすれば、マネジャーたるものそうした諸要因をよく理解しておくべきである。
ひとつの組織が擁する諸々の側面――技術的能力、報奨制度から社風、施設まで――によって技術開発への投資が会社にもたらす収益は変わってくる。ただし、これまでの経験上、上手に技術開発をすすめる会社には共通する3条件がある。
1. トップの技術志向性 会社、事業を引っぱっていくトップの多くが技術分野の教育を受け、会社でもその畑での経験を積んでいる場合。技術上の話題が好きだし、自分も口をはさみたがるタイプである。
2. プロジェクト選別基準 マネジャーが特定分野における技術的リーダーシップを支援、保持するはずのプロジェクトに特に予算を配分する場合。
3. システムと機構 会社の決定システムおよび機構が次の2通りの方法で技術問題に優先権を与えている場合――(a)会社のシステム上、事業活動と技術面での決定が密接に連携している、(b)技術問題の決定システムおよび機構が、社内の他の決定システムと同調している。
これら3条件をどの程度まで満足させるかで、その会社が技術力に徹底的かつ効果的に依存する会社から、依存もしなければ、したくてもできない会社までをならべた順位表のどの辺に位置するかが決まってくるのである。本稿では事例として9社をあげ、それぞれの場合に上記3条件がどの程度明確に浮かび上がってくるかを指摘したいと思う(9社の概要については別項を参照されたい)。



