大企業の上級管理者層はこれまで、重要な意思決定の基礎となる情報を職能別のスタッフに依存してきた。データを収集し、分析を行なうという課題は、経営管理者層が自ら行なうにはあまりに時間がかかり、また負担になるだけのものであった。

 しかしながら今日では、改善されたコンピュータ技術が、最高経営者層の間での分析的志向の高まりと相まって、企業がそのピラミッド組織の頂点に情報を集約していくパターンを変え始めている。

 事実、いくつかの企業では、そうしたデータベースによる支援を利用する際の責任が、経営管理者の役目そのものに移行させられている。

 さらにもっと重要な点であろうが、これら企業の最高経営者は、アウトプットの単なる最終利用者ではなくなり、そうした情報形成過程の積極的な参加者となっている。数のうえではまだわずかではあるけれども、この種の企業は、明日の経営管理情報システムの興味深い先端的事例を提供してくれる。

 コンピュータのターミナル(端末機)は、オフィスの"お客様"ではなくなり、すっかりオフィスに融け込んだものとなっている。一般社員は、すでに何年も前からターミナルを使いこなしている。中間管理職が使う機会も増えつつある。幹部社員についても同様である。しかし、ビリオン・ダラー企業の最高経営責任者(Chief Executive Officer=CEO)やその他の幹部役員までもが自分たちのターミナルの前で一定の時間を費やすことになるとする考え方には、ほとんどの人びとが驚きの笑みをうかべ、首をかしげて疑問を呈する。最高経営管理者たちがキーボードに向かって一所懸命働いている姿は、どうも正常なものではないと考えられるようである。

 つまるところかれら最高経営管理者層の一日は、各部門の責任者とのミーティング、報告、電話での会話、会談、スピーチ、折衝などで一ぱいだと考えられているわけである。そのうえ、経営管理者層の現実の行動についてのある代表的な調査は、かれらが言葉のやりとりを中心に動いており、"具体的、現実的な"情報を使うことがほとんどないことを示している。ヘンリー・ミンツバーグによれば、「マネジャーがインプットするものの大部分は、感覚的、表面的なもの――他人についての印象とか感じ、うわさ、ゴシップ等の類――である。しかも、きわめて分析的なインプット――レポート、記録文書、具体的データ一般――が重視されることは比較的少ないと考えられる(1)」のである。

 しかし以下のような事例を考えてみよう。

□ ノースウエスト・インダストリーズ社の会長かつ最高経営責任者であるベン W. ハイネマン氏は、ほとんど毎日自分のオフィスのコンピュータ・ターミナルの前で数時間をすごす。ハイネマン氏は、ターミナルを使って、かれが運営している9つの会社のレポートを取り出し、膨大な量のデータの蓄積と、やさしいコンピュータ言語により新たな分析を加える。ターミナルはかれにとって、経営活動を監視し、計画するための最も重要な道具となっている。

□ メリル・リンチ社のロジャー E. バーク社長と財務担当責任者のグレゴリー・フィッツジェラルド氏は、時々刻々と更新されている会社の世界的活動についての膨大なレポートを、かれらのオフィスにあるコンピュータ・ターミナルを通じて取り出す。最近になってグラフィック処理能力が付け加えられたこのシステムは、メリル・リンチ社の前社長で、現財務長官であるドナルド T. レーガン氏により、最新の財務状況についての情報を迅速に作成するための手段として創始されたものである。

□ ワウサウ保険会社の取締役会会長兼最高経営責任者であるジョン A. スコーネマン氏と、社長であり最高業務責任者であるジェラルド D. ブィスト氏は、自社および競合相手の経営内容についての情報を集積したデータベースをオンラインにより利用している。両氏はターミナルを使って数量的な分析やグラフによる分析を行なっており、自社の戦略決定に役立てている。