情報システム(information systems、以下IS)に関して、産業界は20年以上にわたる経験を有しているにもかかわらず、依然として情報システム分野をめぐる失敗は、驚くべきほど頻繁に繰り返されている。本稿の著者によれば、情報システム開発プロジェクトの実行に先だって、リスクを正しく評価することによって――単一のものであれ、複数の組み合わせの中から選択する場合であれ――、総括マネジャー、ISマネジャー両者ともに、これまで繰り返されてきたような大失敗を避けることが可能になる。

 著者はまた、プロジェクトが異なれば、管理の仕方も変えなければならないことを論じている。リスクの主たる規定要因は、プロジェクトの規模と組織構造、そして企業のもつ関連技術についての知識である。各企業は、一連の質問項目を使うことによって、リスクを評価し、リスクの性格の異なるそれぞれのプロジェクトに最適の管理手法を選択するために役立つリスク体系図を作成することができる。

 □ある大手の生産財企業では、1500万ドルの費用をかけてあるメーカーから他メーカーへの転換の計画を進めるが、コンピュータ・システムのインストール(搬入・据え付け)日の1ヵ月半前になって、その計画にトラブルが生じていることが明らかになり、インストールを1年遅らさざるをえなくなる。18ヵ月を経た後でも、この転換計画は実現していない。

 □ある大手消費財企業では、コンピュータによる新人事情報システムを9ヵ月で稼動させるべく、25万ドルの予算をたてる。それから2年後、250万ドルが費やされ、この計画を完了するまでには、さらに360万ドルが必要だと予想される。このプロジェクトの中止は不可避である。

 □ある大手金融機関では、新金融システム・パッケージ用のプログラム開発のために、150万ドルを超える費用と12ヵ月もの時間を費やす。このシステムは、中枢業務に携わる1グループにとっては日々の業務遂行上、きわめて重要な機能を果たすものである。このシステムは何とか完成し、インストールされるが、その結果は、トランザクション(データファイルの変更、削除などシステムに対する何らかの指示、入力)の平均応答時間が、期待されたよりは、はるかに長いというものに終わる。

 以上の現象は、1960年代後半から1970年代初めにかけての第1段階ないし第2段階の事例からとってきたものであろうか(1)。いや決してそうではない。こうした現象はすべて、1980年のフォーチュン誌500社においてもみられるものである(海外についても分析する機会があれば、まったく同様に印象的な例をあげることができるであろう)。体系づけた説明がほとんど困難なほどに、大きな情報システム(information systems、以下IS)構築のプロジェクト遂行に際しては、依然として大きな失敗が繰り返されている。企業社会は、情報システムに関して20年以上の経験を積んできているにもかかわらず、依然として「なぜ」という問題につきまとわれているのである。

 これらのケースについての分析、そしてまた過去10年間における多くのISプロジェクトに携わった体験的知識に基づいていうならば、全体的管理とIS管理のいずれにもかかわる実行に際しての3つの重大な欠陥を指摘することができる。初めの2つは、単一のプロジェクトのリスク評価の失敗と、複数のプロジェクトの組合わせからの選択における集合的なリスク評価の失敗である。第3は、プロジェクトが異なれば、異なった管理手法が必要とされることへの認識の欠如である。本稿は、これらの欠陥に焦点を当てるとともに、それを克服する方法を示そうとするものである。

プロジェクト・リスクの構成要素

 あるプロジェクトに関する典型的なフィージビリティ・スタディは、財務上の利点、品質上の利点、導入コスト、ステップごとの目標期限と完成期日、スタッフの必要レベル等の問題をすべて含んでいる。端的にいえば、これらの問題の見積担当者は、ぼう大な補助的資料を提供する。しかし、彼らが、時間的なずれ、コストの超過、技術的な欠陥、すなわち明らかな失敗のリスクについて率直に扱うことは、極めて稀である。むしろ彼らは、そうした問題を無視することで、その可能性さえ否定する。彼らは、成功を保証するべき適切な人的資源、コントロールなどが当然得られることを前提としているのである。

 リスクという言葉によって、私は次のような危険性の存在を意味するものとしている。

・期待される利益のすべて、もしくはその一部を失ってしまうこと。