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どんな製品も、それがサービスにしろ物にしろ、一定量の無形性をもっている。保険や輸送といったサービスは、いうまでもなく、ほとんどが無形である。ところで、物としての商品でも、買われる前には、見ることはできても試用してみることができない場合が多い。こういった製品の無形性の程度を理解しておくと、販売戦略および販売後のフォローアップ戦略が違ったものになるだろう。サービスは物に比べて、前もってテストすることが難しいけれども、サービスおよび物における無形要因は、見込客を購入にふみきらせる大切なものである。
しかし、サービスの売り手は、見込客が入手できる恩恵(ベネフィット)についてくわしく知らせる場合に、特に注意すべき問題に直面するのである。著者は、どんな製品にも無形要因が存在すると主張しながら、サービスの売り手に対して、どのようにすれば顧客を長くひきとめられるかの助言を述べている。
サービスを売るのか、物を売るのかで会社を分けたところで、ほとんど役に立たない。同じ分けるならことばの表現を変えると、いちだんと有用になる。サービスと物という代わりに無形製品(intangibles)と有形製品(tangibles)と呼びたい。工場でつくられるものが何であれ、市場では例外なく製品の無形性が売られている。
無形製品のマーケティングと有形製品のそれがどう違うかを考えてみると、この区別の有用なことがはっきりする。もちろん、2つの違いはあきらかだが、違いと並んで、無形製品のマーケティングと有形製品のそれとの間には、重要な共通点があることがわかる。
私のこの新しい用語法を使うと、両者のマーケティングの共通点がどこにあるかがはっきりとしてくる。有形製品と無形製品の両者に宿る無形性の程度がそれである。マーケティングとは、顧客をつくり、それを維持するための活動である。顧客をつくろうとする場合、決め手になるのが製品のもつ無形性なのである。顧客をいつまでも顧客でいさせたい――顧客の維持――ということになると、無形性の強い製品はたいへん難しい問題を起こす。
本稿では、まず、無形・有形製品を売り込むのに、どんな点の無形性がたいせつかを明らかにする。つぎに、無形製品の売り手が顧客を維持するのにどんな困難に直面するかを考える。
どんな製品にも無形性がある
無形製品――旅行あっせん、貨物輸送、保険、修理、コンサルティング、コンピュータ・ソフトウェア、投資銀行サービス、ブローカー、教育、ヘルスケア、経理サービス――は、ほとんどの場合、前もって試用し、点検し、テストすることができない。見込客は、このサービスを買えば何が得られるかを知るには、代わりのものに頼らないわけにいかないのである。
観光旅行をどこにしようかと思うと、キラキラ光る青い海辺に建つ異国風のリゾートホテルの豪華な部屋を、みごとな角度と色彩で表現した写真を目にすることはできる。また、あるソフトウェア・プログラムがどんなにすばらしいか、投資銀行や油田探査会社がどれくらいすぐれた仕事をしてくれるかを知るには、現在それらを利用している人の助言を求めることはできる。エンジニアリング会社、信託会社、ロビイスト、教授、外科医、予備校、ヘアスタイリスト、コンサルタント、修理業者、ビルメインテナンス会社、運送業者、フランチャイザー、ゼネコン、葬儀屋、仕出屋、環境保全会社、建設業者等々については、利用経験客に尋ねることはできる。
有形製品はこれとは違って、ふつう、ある程度は、手にとって調べる――見たり、触ったり、嗅いだり、味わったり、またテストする――ことができる。これらは購入の前に、たいていの場合できる。車をテスト運転し、香水の匂いを嗅ぎ、製粉機の数値制御盤を動かし、売り手の工場にある蒸気発生装置を点検し、成型押出機を事前テストすることができる。
しかし実際には、最も有形性の高い製品でも、購入の前にテストし、動かしてみただけで、十分確信をもって判断できるわけではない。別の場所に据え付けられている蒸気発生プラントやコンピュータを前もって点検し、プロポーザルや設計をこまかく徹底的に検討するだけでは足らないのである。製品特長や据付方法以外に、まだまだ多くの問題があるのだ。



