モチベーションとはなにか

 では、そもそもモチベーションとは何か。

 ビクトリア大学のクレイグ・ピンダーによれば、モチベーションとは、「個人の内部もしくは外部から派生し、特定の行動の強度、方向、持続性を規定する活動力」と定義されている。モチベーションは目に見えないもの、実際に取り出して見せることができないものなので、心底から実感をもって理解することが難しいが、それは、自分が何かの行動を起こそうとするときに、(外からの刺激を受けながら)自分の内側にもち上がってくる力のことだ。

 モチベーションは、①強度、②方向性、③持続性の3次元からとらえるのがよい。図1を参照してほしい。この3つの次元からとらえていけば、モチベーションを深く理解しやすくなる。

モチベーションの強度

 3つの次元それぞれについて、すこし詳しく説明していこう。まず、第1のモチベーションの強度とは、われわれをある行動へと突き動かしていく内なる力が、どれほど強いかを示している。一言でいえば、動機の強さだ。

 モチベーションの強度は、気持ちの「強さ」や精神的エネルギーの「量」のようなものを指しているのだが、同時に、われわれの気持ちや行動が、前進・後進にどの程度向いているかということに、不可分に結びついている。

 つまり、快―不快の感情に動かされて、われわれは喜びや楽しみ、希望、友愛といった快の感情をもたらしてくれることには接近しようとするが、反対に、悲しみや恐れ、不安、ストレスといった不快な感情を引き起こすことを回避しようとする気持ちが働く。接近と回避というから別々のことのように聞こえるが、この2つの心の動きは表裏一体であり、われわれの感情に強く結びついている。