米国で7番目に大きな、イノリイ・コンチネンタル銀行は、現存する技術を使って、"未来のオフィス"を現実のものとした。コンチネンタル銀行は、中央の1台の大型コンピュータと相互に結合された小型コンピュータとのネットワークを構築することにより、銀行の膨大なデータベースを含む、中央集中のライブラリィを開発した。そのため、銀行の管理者は、自宅からでも、空港からでも、あるいはホテルの一室からでも、オフィスと連絡が取れるようになった。また、遠隔電話口述機能は銀行のワード・プロセッサー装置に結ばれている。電子郵便システムは、いまや管理者が紙に書いたメモを使わなくても情報を伝達することを可能にし、そのメモの内容は、電子ファイル・キャビネットに保存される。

 著者はコンチネンタル銀行の管理者が、電話のある所ならばどこでも、オフィスとすることができる点を指摘している。また、この柔軟性のある設備の現在と将来に予想される影響のいくつかについても論じている。

 コンピュータは常に、数多くの計算をきわめて高速に処理するという、計算作業にかかわってきた。コンピュータによって、かつては人間が処理していた多くの業務が、より効率的に、より高い生産性で達成される。もし、より高度なコンピュータ技術が管理者のオフィスの中に導入されたら、同じ程度の生産性向上の結果がもたらされるであろうか。また他の関連する技術も、同様に未来のオフィスの生産性向上に寄与するであろうか。これらの例について考えてみよう。

□ あなたは同僚に電話したが、彼は不在であった。後に、彼は折り返しあなたに電話してきたが、今度はあなたが不在であった。あなたは再び彼に電話をしたが、またもや彼は不在であった。これは電話の鬼ごっこの類であり、常に忍耐を強いるもので、ほとんどのエグゼクティブの生産性を阻害している。

□ あなたは上司にメモを出そうとしている。あなたの秘書は、社内の所定の場所でそのメモをタイプする。彼女はあなたの検閲と署名を求めて書類を送り返してくる。もし間違いがなければサインし、保存用コピーを取るため、あなたはそれを彼女に送り返す。封筒に宛名を書き、メモを入れた後、そのメモはあなたのオフィスから出され、上司のオフィスに届く。この作業に何と3日半を必要としたのである。そのメモは海外に送られたわけではなかった。それはただ、通りを横ぎって別のビルディングにいるあなたの上司に届けられねばならないだけであった。あまりにも多くの人びとが、この情報の生成、複写、および配送に時間を費やしていた。

□ あなたが金融業者であるとしてみよう。あなたの顧客が電話で50万ドルの借入れを要求してきた。その顧客は30分以内に貸付けの確証を必要としていたとしよう。普通、彼は自分の信用度は大丈夫である、と言うであろう。しかし、あなたは彼の最新の財務情報を調査せずに、貸付けを認めるような危険を犯すことができるであろうか。

 本稿では、きまりきった、時間を浪費する多くの雑務を最小にすることによって、コンチネンタル・イリノイ銀行で、いかに未来のオフィスと言われる技術が現実のものになったかを論ずる。第1節では、われわれがいかに未来のオフィスに移行したかを解説するために、この銀行のデータ処理システムの特徴の概要を述べる。第2節では、いくつかの主要な計画の展開の跡をたどり、そして、第3節では、プロダクト・ラインを統合化するための、コンチネンタル銀行の今後の検討課題について論ずる。最後に、このような新しい技術を導入するときに直面した、いくつかの社会面と組織面からの問題を探ってみる。

基本的な考え方

 1977年までは、コンチネンタル銀行におけるデータ処理と文書処理は、大部分の大企業と同程度の開発レベルにあった。データ処理に関しては、銀行の労働集約機能を高度に自動化していた。すなわち、照合処理、記帳、およびその他大量の計算処理である。技術の発展に従い、大量に発生するようになった銀行業のもう1つの労働集約的部分、つまりワード・プロセッシングにものりだした。

 しかし、1977年以前において、われわれは経営者あるいは経営の領域におけるデータ処理や文書処理では、直接には何も推進していなかった。データ処理によってつくられたレポートを利用しようとする管理者は、そこに含まれるデータが他のデータと何の関連ももたない未加工のデータであるために、本当に自分たちの必要性を満足させるものはなにもないことに気づいた。しかも、これらのことこそ人びとが情報を探し出すために大部分の時間を費やし、そのためにコミュニケーションをはかったり、追跡調査したり、あるいは討議のために、会議にあちこちを飛び回ったりすること、そのものであった。経営者の要求を満たすために、その補助スタッフもまた同じように、しばしば時間を浪費する仕事をしなければならなかった。

 企業経営者は昔から"取るに足りない"活動に貴重な時間を失っている。例えば、ある経営者があるプロジェクトについて、状況報告をスタッフの1人に求めたとしよう。もし、彼がこの経営者の呼出しのあったとき、在席していなかったとすると、連絡がつくのはその日の遅くか、おそらく翌日になってからであろう。その間2人が接触するために時間の浪費が続くわけである。この話の中に、データを準備するための経営者のアシスタントを登場させると、さらに多くの呼出しが起こり、どのようなデータが必要とされているか、どのように着手するか、そしてどのように状況報告をまとめるかという議論に、さらに多くの時間が浪費される。そして、スタッフの一員が報告書をタイプし、検閲のうえタイプや実際の誤りを修正する作業を含む編集段階に入ると、さらに余計な時間が必要となる。