ストレス反応の6パターン

 リーダーは常にストレスを抱えながら生きている。この仕事にストレスは付き物とはいえ、今日のリーダーが感じる重圧はとりわけ深刻である。多くの経営幹部は、経済の先行き不透明感から技術革新による破壊的変化、地政学的な不安定まで、多方面でプレッシャーが高まっていると口々に語る。

 筆者らは6年間にわたり、こうしたストレスの要因を研究してきた。そこから見える傾向は明らかである。リーダーにかかるプレッシャーを追跡するブランズウィック・グループの「リーダーシップ・ストレス指標」によれば、ストレスレベルはパンデミックのピーク時よりも現在のほうがさらに高いという。

 筆者らが米国、英国、ドイツ、日本の大企業の最高経営幹部400人を対象に2025年9月に実施した調査では、半数以上が非常に強いストレスを感じていると回答した。全体の約3分の2近くが、この1年でストレスレベルが上昇したと述べており、また半数以上が、今後その水準はさらに上昇すると予測している。

 短期間のストレスであれば集中力を高める場合もあるが、ストレスが高い状態が持続すると、意思決定の質が低下したり、ウェルビーイングが損なわれたりする。次第に視野が狭まり、場当たり的な思考に陥る。手痛い判断ミスも犯しやすくなる。

 筆者らの一人はグローバル戦略コンサルティング会社のパートナーおよび統合的心理療法の現役セラピストとして、もう一人はハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の元BiGS所長としてリーダーらと関わり、さまざまな業種や地域の経営幹部が仕事上のストレスを乗り切る手助けをしてきた。

 そして、プレッシャーのかかる状況での振る舞いが人によって異なること、またそのような状況で自身が取りがちな反応パターンをよく理解することが、パフォーマンス向上だけでなく、レジリエンスの強化や、よりよい成果につながることを間近に見てきた。

 ストレスに対し、生物心理学的にまったく同じ反応を示すリーダーは二人としていないが、それでも一定のパターンが浮かび上がってくる。筆者らは、これらのストレス反応を6つの主なパターンに分類する枠組みを考案した(図表「ストレス反応の6つのパターン」を参照)。

 この枠組みの作成に当たっては、心理学者のリチャード・ラザルスとスーザン・フォルクマンの研究を参考にした。彼らの観察によれば、人は重大な局面に立たされると、それが脅威なのか、それとも機会なのかを瞬時に判断するという。筆者らは彼らの知見に加え、心理学者のジェームズ・グロスの感情調節に関する研究を組み合わせた。グロスの研究ではリーダーを、状況に応じて感情をコントロールし、自身の対応の仕方をたえず見直すタイプと、危機が去るまで感情を厳しく抑制するタイプに分けている。

 筆者らの枠組みでは、これらの考え方と自身の経験を組み合わせ、リーダーのストレス反応を「(1)危機に際して落ち着いて対応するか、積極的な行動に打って出るか」と「(2)危機を脅威と捉えるか、機会と捉えるか」という2つの軸に沿ってポジショニングしている。それぞれの軸のどこに位置するかで、ストレスに対してその人が取りやすい反応パターンが6つのタイプのうちどれに当てはまるかが決まる。