ビジネス界に蔓延する誤謬

　10年余り前に大手金融サービス会社に勤めていた時、私は経営幹部の一人から、会社の収益性に対する理解を深めるためのプロジェクトに参加するよう依頼された。

　私が所属していた株式部門は、投資マネジャーへのサービスで手数料を受け取るとともに、質の高い調査、タイムリーな取引、新規株式公開（IPO）への投資機会を提供することで、自社の収益を最大化させようとしていた。何百というクライアントがいるなかで、ある投資信託会社があり、最大規模の顧客だった。

　我々はこの投資会社のアナリストやポートフォリオ・マネジャーのところに調査員を繰り返し派遣し、同社の取引がスムーズにいくよう投資した。IPOの際に、同社に大量の新規株式を引き受けてもらうことが重要だと考えていたからだ。我々はこの機関投資家に満足してもらうよう、あらゆる手を尽くしていた。