4つのルートの共通部分
~緑一色から青を取り入れ始める
グローバル化を始めた日本企業の本社の大半は緑色で、そういう緑の企業が海外へ事業展開することからグローバル化の物語が始まる。
最初は、緑の日本人駐在員を1つないし少数の海外拠点へ派遣することが多い。その駐在員が初めて海外駐在する場合、自分が知る緑の方法でのスタートアップとなる。その際、現地事情を勘案するにしても組織・制度の基本は緑になる。これがタイプ1の「本社が緑・海外も緑」である。
ところが、海外拠点を設けてすぐに効果があるわけではない。人事制度も含めた組織運営の仕組みを現地の慣行や法律に合わせて修正する。すなわちローカル化である。これは現地事情に応じた配慮が必要であり、その際も仕組み(制度)の骨組は青色を入れることが多い。そのようなグローバルな仕組みの中で、法的な面を含めて現地特有の事情を取り入れる。さらに、この段階で経営・事業を主導するのは依然として緑の手法に慣れた日本人なので、緑も混ざる。つまり海外拠点はまだら模様になる。例えば、職務を基本とする職務等級や職務給をいれるが、実際の運用では、人的な要素をかなり取り入れて運用するというようなことである。これがタイプ2の「本社が緑・海外がまだら」である。
その後、複数の海外拠点に展開すると、拠点それぞれに独自色を帯びたまだら模様が出現する。つまり、拠点の数だけまだら模様ができることになる。地域性やお国柄といった違いもあるにせよ、まだら模様の特性は、拠点づくりを行う初期の段階で、誰が責任者であったか、事業の成長速度や人材市場での人材調達の難易度や人材の流動性、どこのコンサルティングファームを起用したかといったマネジメントによってつくられる。したがって、タイプ2の「海外がまだら」には、各拠点で緑と青が混ざる、各拠点のマネジメント特性によるばらつきが出る、という二重の意味がある。
そして、このあたりで、企業はグローバル化における分岐点を迎える。そこからの展開は、次のような4つのルートに分類できる。
〈A〉外堀ルート(海外から青色化)
共通ルート部分も含め、タイプ1(本社が緑・海外が緑)→タイプ2(緑・まだら)→タイプ3(緑・青)→タイプ4(まだら・青)→タイプ7(青・青)と、外堀から埋めて行くルートである。同ルートは、仮にタイプ7(本社も海外も統一された青)があるべき姿だとする場合には、1つの現実的なルートであるといえよう。
このルートは、分岐点で青色の外国企業を買収することでグローバル化を加速するのがポイントだ。近年、グローバル化を一気に加速する方法として常套手段化している。
例えば、全事業の売上に占める海外の割合がまだ3割未満の段階で、それなりのサイズの外国企業を買収するとしよう。その場合、買収先の企業がグローバルに事業を展開している企業だとすると、特に欧米企業の場合は世界で統一された青い仕組・制度を持っていることも少なくない。そうなると、買収側の日本企業にとって、それまで展開していた海外の自前の拠点も含めて、海外の経営・事業を買収先の経営者に委ねて、買収先の青の仕組で統合・運営させることも可能になる。もちろん、買収側の判断でそのようにするのだが、それでも買収側日本人の中からは「軒を貸して母屋を取られたみたいだ」という声が出る。これがタイプ3の「本社が緑・海外が青」だ。JTのタバコ事業がその嚆矢であり、電通などもこのアプローチを取りつつあるようだ(ただし、いずれも日本に加え中国は日本の本社の傘下に残している)。
とはいえ、海外のことは買収先等の経営者に任せるといっても、本社としてのガバナンスを効かせる必要は残る。そこで主要な海外拠点の経営陣に日本人を送り込み、同時に財務的なガバナンスの仕組みやプロセスをつくる。問題は、ここからだ。
そもそも、事業会社による買収は、多くの場合、単なる財務的な投資としてではなく、事業としての戦略的な買収である以上、本来は、事業戦略と戦略実施の中身にまで立ち入って評価し、その上で財務の結果を解釈したり、トップ経営者たちのパフォーマンスを評価したりしたくなるはずだ。さらに本格的なシナジーの創出にも被買収側の協力を全面的に得たい。できればせっかく手に入れた青い企業組織を日本人の優秀層をグローバル人材に育てる場としても活用したい。ところが、これらを実現するには、本社側でも青のケイパビリティを備えることが必須となる。その結果、本社にも青が混ざりまだらとなり、タイプ4の「本社はまだら・海外は青」となる。
ここまでくれば、その流れに乗って「本社も青・海外も青」というタイプ7に向かおうということになる。まだこの流れに乗ってタイプ7に行き着いたところはないと思うが、そうなりそうな企業は出始めている。