〈B〉トップダウン青色化ルート(本社を早めに青色化)

 タイプ1からタイプ2に進むあたりで、青色化という意味でのグローバル化を一気に加速する企業も出てきた。それは本社と海外をほぼ同時に青色化するルートである。例えば、企業のオーナーが、本社を含めたグローバルな青色化をリードできる日本人のグローバル人材を外部からスカウトすることからこのルートは始まる(LIXILなど)。

 あるいは、オーナーが、まずは海外経営に造詣の深い日本人をトップに指名し、外国企業買収も絡めた青色化のモメンタムをつくり、その次に外国人経営者をトップにすえて内外の本格的な青色化を進める(武田薬品工業など)。また、オーナーの有無にかかわらず、緑の企業の生え抜き人材の中で、海外拠点経営や外国企業買収の修羅場をくぐり「青色部分のマネジメント」を体得している人材をトップに据える例も、このルートのバリエーションだ。いずれにせよ、日本企業にとって青色化する際の最大の障害は本社であり、通常はAの外堀ルートで見たように、本社の青色化は後回しになるが、トップダウンルートでは、タイプ1→タイプ2の後、すぐにタイプ7の「本社が青、海外も青」に向かうのである。

 

〈C〉まだら同一化ルート(本社も海外も同じまだら)

 タイプ2(本社が緑・海外がまだら)の後に、「本社がまだら・海外もまだら」というタイプになるルートもある。つまり、タイプ1(本社が緑・海外が緑)→タイプ2(緑・まだら)→タイプ5(まだら・まだら:両者は異なる)→タイプ6(まだら・まだら:両者は同じ)というルートである。このルートは、日本での成功体験のコア部分を残す為の緑と、世界標準的な青を組み合わせたハイブリッドの仕組・制度をつくり、それを内外共通で適用するというアプローチである。

 この内、タイプ5は、本社のまだらと海外のまだらの中身が異なる場合である。例えば、海外でまだら化が進み、それなりに青色も混ざってきたとしよう。そういう海外を統治するには、本社にも部分的に青色化が必要となり、本社もまだら化する。ただし、海外のまだら化と本社のまだら化はそれぞれのペースで進み、その中身も異なっているため、本社と海外のまだらの内容を統一しようという動きが出る。例えば、人事制度について、国内でも海外でも通用するような緑と青を組み合わせたハイブリッドの制度をつくり、それを世界中に同じ形で展開する。あるいは人事制度は職務中心の青色のもので日本を含めて世界統一の制度をいれるが、ミッションや理念のところに日本的なものを色濃く残すというハイブリッドもあるだろう。

 このアプローチは、国内で起業したオーナー経営者が自ら強力なリーダーシップを発揮して陣頭指揮でグローバル化も進めるという場合が典型である(例えば、ファーストリテイリングや楽天)。そうすることで日本と海外との差異をなるべく小さくすることもできる。楽天の方からは、日本で仕事していてもそれが海外での仕事のシミュレーションになるように内外の仕組み・言語をそろえるのだという話を聞いたことがある。

 

〈D〉緑化ルート(海外まで緑化)

 もう1つ、日本企業らしさを最大限に生かしながらグローバル化するという意味で、大事なルートが残っている。それは、タイプ1→タイプ2(緑・まだら)あたりまできたところで、その先のタイプに進まずタイプ1に戻すケースである。海外の事情を把握したところで、本社と海外が異なる色(組織モデル)で運営するのは好ましくないと判断し、日本のやり方を極力形式知化するなどして、海外も緑で染めて、結果的に本社も海外も緑というタイプ1に戻すのだ。このルートは、日本企業らしさに根付いた確固たる強みがある業種・企業にのみ可能なアプローチである。

 また、同じタイプ1でも、海外のことがよくわからない当初のタイプ1とは中身が異なる。日本とは事情が異なる海外のことをわきまえた上で、海外の従業員に対して、緑の組織運営や制度や仕事の進め方についてわかりやすく説明した資料をつくり、研修などでしっかり教える。内容も日本だけの場合よりもシンプルにした上で形式知化を進めている。この例はトヨタである。

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 以上で、大まかではあるが日本企業がグローバル化していく際の典型的なケースをカバーした。次回は、今回取り上げた典型的なケースを踏まえつつ、そもそもどのようなグローバル化が望ましいのか、についてお話したい。