患者に最高の顧客体験を

 クリーブランド・クリニックは長い間、高度な医療レベルを保ちつつ、コストを抑制している点で高い評価を得てきた。しかし2009年、CEOのデロス・(トビー)・コスグローブは、自院の実績を他と比較した際に、入院患者がクリニックの本院と8カ所のコミュニティ病院での体験をよく思っていないと認識し、何か手を打つ必要があると考えた。

 そして、その後3年間でクリーブランド・クリニックは大きな変貌を遂げた。約4600の病院を対象としたメディケア・メディケイド・サービス・センター(CMS)の患者満足度調査では、総合評価が平均並みから一気に上位8%内へと上昇。いまでは、その運営や変革の手法を学ぼうと、世界各国から数多くの病院経営者がクリーブランドに視察に訪れている。

 クリニックの遂げた変化は、これまで最高の顧客体験の提供という面で競う必要のなかった、医療以外の業界の組織にとっても学ぶべきところがある。多くの場合、そうした組織には顧客満足という意識のないままに雇われた従業員が存在する。このような組織が、従来の強みを損なうことなく、顧客体験を改善することは可能だろうか。クリーブランド・クリニックの成功は、それが実現できることを示している。