石倉 ところで、ベンチャーは大きく事業を展開する上で、「人」や「チーム」が大事だと思いますが、日本に、アジアでメガベンチャーをというような若い人、新しい産業を創れるような予備軍はいそうですか。それを目指しているテラモーターズでは、どのようにして、徳重さんの目標に共感する人を見つけてくるのでしょうか。

徳重 自分の経験から考えても、常に現場を飛び回らなくてはならない起業には大きなエネルギーが必要です。そのエネルギーをどこから持ってくるかですが、挫折をばねにする場合もあります。いろいろなことがうまくいかないときは、エネルギーをためるプロセスだと考えればよいのです。これまで日本人に不足しているといわれている、ダメもとの精神とか、スピード感とか、決断力とかリスクテイクを「オン」にすれば、絶対に世界で勝てるはずです。

石倉 そう考えると、いわゆる優等生に熱意を持て、というよりも、優等生でなくてもガッツがある人を探したほうが、世界で戦い抜いていける可能性が高いのではないでしょうか。スキルを学んだり、現場を知ることは、その気になれば誰でもできると思いますので。でも、失敗を恐れずリスクをとるというのは、どう説明しても、できない人も多いですから。

徳重 そうですね。気概を持つ人たちに対して、テラモーターズが一つのモデルになって、挑戦する姿勢、うまくいかなくてもやり抜く力を示し、日本発のメガベンチャーができる!という事例になることを目指しています。

石倉 テラモーターズはまだまだ成長ののりしろがありますね。そういう会社でどういう人材が育っていくか、また次の機会に聞かせてください。今日はありがとうございました。


【対談を終えて】

 徳重さんは、日本発のメガベンチャーを目指してという明確な使命を持っているテラモーターズの創業者。少し前に私が書いているブログなどをテラモーターズの方が読んで、『世界へ挑め』を送っていただいたときから、とても興味深く、一度お目にかかりたいと思っていた方でした。そこで、この対談を大変楽しみにしていたのですが、思った通りの方だった、さらにもっと迫力があり(写真でわかるかもしれませんが、比較的背が高い私が小さく見えます!)あふれるエネルギーが感じられました。

 印象に残ったのは、いわゆる戦略的思考のオーソドックスなプロセスを理解して、実践しているのですが、それが「今」の世界の現場の体感に裏打ちされていること、そしてその背後には燃えるような使命感があることです。実際にお目にかかってみると、こういう日本にしたい、世界にしたい、というビジョンとそれを実現しようとする大きなエネルギーが私に迫ってきました。

 シリコンバレーでの経験、アジアの現場をよくご存じであること、日本人の基本的な力、アジアにおける日本に対する信頼など、今の世界、アジア、そこにおける日本の位置づけを熟知している方だと感じました。

 お父様に逆らわずにやってきた生活から一変して、自分のやりたいことに転換したときのこと、まず理想を考えてそれを周囲にも伝え、それを実現するために自分自身を鼓舞していくというアプローチはとても共感が持てました。日本を何とかしたいというパッションや使命感はこれまでにあったいろいろな方と比べてもとても強く、それが前面に出ている点で、あまりこの年代で見ることのないリーダーだと思いました。

 ソニーとホンダが好きだというのは、みなにあきれられながらも、最初から世界を目指し、世界に冠たる企業になったところであり、徳重さんご自身がやりたいことなのだ、と実感しました。私も創業者が好きなのですが、特にこの時代の創業者は元ベンチャー、その後大企業という意味で、徳重さんのメガベンチャーに重なって、とても印象的でした。

 まだテラモーターズは歴史が浅いですが、テスラのイーロン・マスクにも働きかけよう、アジアでのプラットフォームを目指そうなど、夢は限りなく、同時にとても実際的だと思いました。

 どんなときでも諦めない、何とかやり遂げるというのは、私が好きな京都の企業の創業者とも共通していると思います。「平成の高杉晋作」と言われたことがある、と伺いましたが、歴史が好きだ、山口県出身という点でも徳重さんにとても合っていると思いました。こういうパッションとエネルギーにあふれていて、限りなく夢や目標が広がる人がこの年代以下で多く出てくるとよいと思います。そのパイオニアになっていただけるように応援します。