TOEICプログラムの実施運営で知られる国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、現在、グローバルに活躍するビジネスパーソンの育成に向けて、そのウイングを広げ続けている。自身、海外での勤務経験も豊富で、国際ビジネスに精通する斎藤真協会専務理事に、協会の目指す「グローバル人材育成の今」を聞いた。
地球の一員として
いかに貢献できるか

斎藤 真
慶應義塾大学経済学部、Columbia University, Graduate School of Business卒業、MBA取得。大手商社に入社し、主に北米におけるM&Aを含む投資事業に従事、エネルギー関連や発電事業会社の経営に携わった。ワシントンD.C.5年、ニューヨーク6年、ロサンゼルス11年、メキシコ・シティーに6年間在住した。大リーグ(MLB)や全米フットボールリーグ(NFL)等のスポーツイベントのマーケティングも手掛ける。2010年より現職。
「人と企業の国際化の推進」をミッションとするIIBCが育成しようとするグローバル人材とはいかなるものか。
「グローバル人材の定義は、時代とともに変化してきました。1960~70年代までは、海外要員と呼ばれ、日本製品を欧米市場に売り込めばよかった。製品に競争力があり、韓国や中国の姿もない時代ですから、良い製品さえあればビジネスができました。アジアの競合国や新興国が台頭してきた現代では、交渉力、折衝能力や投資事業のマネジメント能力も含め人としての質が問われています」と語る斎藤真専務理事。グローバル人材として最も重要なことは「社会に対するコントリビューション」だという。
「これまで日本人は国際的には常にアウトサイダーでした。世界は日本の外にあり、日本vs世界の構図から逃れられなかった。世界から何を吸収すべきか、何を日本に持ち帰るべきかと発想してしまう。いつまでも“島国日本”なんですね。学びたい、欲しいではなく、自分は何を提供できるか、どんな貢献ができるかを考える人であってほしい。アウトサイダーではなく、地球の一員として世界に貢献できる人、それこそがグローバル人材であろうかと思います」
60年代初頭、小中時代をワシントンD.C.で過ごした斎藤専務理事。「中1のときボーイスカウトに入っていたのですが、そこでは必ず胸に手を当てて米国国旗に忠誠を誓う場面がありました。あるとき、指導者から『君が誓っているのは米国なのか、日本なのか』と問われました。迷いましたが、思い切って『日本です』と答えたところ、『それでいい、そうでなくてはいけない』と言われたことが、私の原点になっています」。日本人としてのアイデンティティを忘れず、根無し草になってはいけないと強調する。
年齢を重ねると、異文化を吸収する段階は過ぎ、その人自身のナレッジ、スキル、コミュニケーション力が問われる。チームワークに必須の信頼性も大事になってくる。エグゼクティブになると、それらに加えて、リーダーシップや問題解決能力、意思決定力、そしてフェアネスが求められる。